水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

ライン下流域でのヨシ・アシ帯におけるヌートリアの影響

先に書きましたNRW州の機関誌掲載記事で後日報告と案内しました「水辺の動物ヌートリアに関する植生研究・影響調査報告」です。

調査対象地は、FFH指定地域(Flora-Fauna-Habitat保護地区)であり自然保護地域にしてされているBienener Altrhein, Millinger u.Hurler Meer それとEmpeler Meerです。水位変動帯における植生変化は微妙な立地変化(水位、水流、水質など)それに関連する動植物の変化が生き物の生存(生息・生育)に大きく関係してきました。

この報告は主としてヨシ帯の草本類とそこに生息するヌートリアの関連を調査して報告したものです。希少種の草本類の変化がほかの生き物とどのように関連するかについて長年調査してきたものです。

 この地区は野鳥保護地区(Unterer Niederrhein)の一部にも指定され(国際、州レベルで)希少種の営巣・生息場所でもありラムサール条約保護地域(1983)に指定されています。

低地ライン川と関連し水辺陸域を含め3つの重要なビオトープタイプ(生物多様性=種の多様性保護)が存在しています。

この場所は15年前までぐらいは水位変化のある、広い静水域と推移帯(陸域を含め)を伴った場所で多様なビオトープがあり、1969年から絶滅危惧種Nymphoides peltataChlidonias nigerが保護対象となっています。ライン下流域における自然の水辺の状態(旧流路、静水域)がよく残っている地区で、1995-1997年と2015年に広いヨシ帯の調査がKleve自然保護協会の手で行われています。

それを見るとヨシ(Phragmites)は増大しましたがウシノシッペイ、クサヨシ、ガマ類;Glyce,Phalaris,Typha)は80-90%が減少していると報告しています。このヨシ帯はツバメ類*の営巣地・繁殖地として重要と指摘されています。ヨシ帯の衰退に何が原因なのか(水位変化、水質の変化の他にガン・カモ類やヌートリアの食害)調べられました。

 そこで、2015年の春から1m角のフトン籠(5cm目)を30個使った実験が行われ(設置は2014.9)、フトン籠の中にはガマ類(Typha latifolia,--- angustifolia)が植えつけられました。

結果、ヌートリアによる食害が顕著にみられ、フトン籠によるヨシ帯、ガマ類の復元の効果が示されています。

原著者と問い合わせ先; Mr.Achim Vossmeyer

info@nz-kleve.de

日本の河川にも最近、ヌートリアの生息が広がっており、具体的な水辺植物の食害や堤体の被害は報告されていませんが(侵入以前のデータが無いので比較できない)、有害外来野生動物として考えることもあり得るかもしれません。

ドイツを見習い着実で地味ながら堅実なデータ集積が各地で強く望まれます。