水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

巡礼 秩父観音34か所札所巡り  3

春の巡礼で達成できなかった秩父山間地の札所、34か所のうち6ケ寺を10月の日曜日に1泊2日で実行に移しました。6ケ寺はいずれも山裾や山間地にあり、幾筋にも別れた秩父山地のそれぞれの谷筋、奥まったところに位置しているため,巡るときは尾根を越え谷を渡り長い道を歩かなければなりません。それぞれに離れているため訪れる為には多くの時間と体力を要します。

限られた時間、しかも70歳を越えて体力に不安を感ずる我身であることから車に頼ることにしました。

日曜の早朝に自宅(川崎・麻生の柿生)を出て、東名高速で一旦都心へ向かい、環八で北上、谷原から関越高速に乗り秩父の北の玄関、花園ICを目指しました。花園ICからは国道140号線(秩父往還)を走り、交通混雑の少ない午前中に長瀞に入りました。可愛い駅舎の秩父鉄道長瀞駅前に車を止め近くの見どころを散策しました。

 荒川の上流部で切り立った巨石群や岩壁に囲まれた長瀞岩畳、長瀞峡の中継点、長瀞ライン下りで降りる人乗る人で川岸がにぎわっています。天気の良い日曜の午前、渓谷の美しさを絵に描きたい人たちで岩畳の岩場は満員、眺めの良い所は既にその人たちに占領されていました。対岸の切り立った岩肌、その上は木々が生い茂り紅葉の季節は、さぞや、色とりどりの木々の美しさが水面に映えて一層華やかさを映し出すだろうと思いました。駅から川岸に下る道は土産物街、地場の名品、特産品が並んでいました。車はそのままに、河岸段丘の上段にある宝登山神社へ参拝。秩父訪問の無事と申年の安全・無病息災を祈願して神社を後にしました。

今回、最初に巡ったお寺は日沢山水潜寺(34番札所)です。本来なら結願の寺(34ヶ所打ちおさめの寺)とされていますが、今回、巡る順が逆のため最初に訪れることになりました。西国、坂東33ケ所、秩父34ヶ所巡りと合わせ百観音の結願寺となっています。参拝の園路は左回りで最初に寺の名前の水潜りの岩屋(鍾乳洞からの湧水)、傍らの地蔵菩薩と本堂の千手観音にお参りし出口(入口部でもある)の33観音像に見送られ寺を後にしました。秩父市内に入って昼食を名代の「蕎麦と草鞋カツ」で済ませ、午後いよいよ山間の寺巡りとなりました。

車は秩父札所で最も西、山中深くにある鷲窟山観音院(31番札所)へ。険しい山間地にあり下の駐車場から296段の急な石段、山門には珍しく石で造られ4mにも及ぶ仁王像が立っています。手摺を頼りに石段を上りつめると、そこには巨大な岩山(5-60m高)を背景に岩屋となって観音堂があります。岩屋のスケールから自然石の崇高さ、巨大さ、そこに堂を建てた不思議さが驚きとともに湧いてきました。隣接する聖浄の滝は雨の少ない年を表すように水が枯れていました。周辺の岩壁は磨崖仏の石仏が多くあります。案内書には奥の院が記されていましたが今年の夏の不順な天候で山道が崩れ行けないようでした。

駐車場広場には秩父ジオパークの案内板があり、秩父山地の岩屋の観音堂を囲む地形・地質、岩石の説明がされており興味を引きました。

小鹿野町字飯田の観音院から299号線に戻り般若地区にある般若山法性寺(32番札所)を目指しました。道沿いは河岸台地に沿って畑が広がり、後ろに秩父山地を控えた明るい中山間地の様相です。この寺も谷あいにひっそりとあって巡礼者の訪れるのを待っているかのようです。二層の山門は鐘楼を兼ねた重厚な造り、上の段の本堂周りは、いろいろな草花が植えられ花の寺になっていました。さらにその上の段には観音堂があり、26番の岩井堂と似た舞台造りで巨岩を背に建てられています。

33番の延命山菊水寺は山間地の平坦な集落近くにありました。この下吉田地区では10月に龍昇祭という、竹に火薬を詰めてロケットのように飛ばし高さや勇壮さを競うお祭りがあるとのことでしたが、今年は丁度終わった直後でした。

この山中の札所を巡り終えて残すは、春に回れなかった2つの寺になりました。この二つは荒川の左岸河岸段丘面にあり東に開けた場所でした。光智山法泉寺(24番札所)は正面に武甲山を眺める小高い位置にあり一直線に上に伸びた116段の階段が見晴らしの良い風景を生み出しています。この別所地区の南方に岩谷山久昌寺(25番札所)がありました。集落名は久那、山門と観音堂の軸線がややずれていて観音堂の左は切り立った断崖が迫っています。背後には農業用水の溜池のような広い弁天池があり上池には蓮、下池には水連が植えられています。本堂は観音堂の反対側で明るい朝日を受ける所に建っています。

この小旅行の秩父34ヶ寺札所巡りは、順不同でこの25番を最後に結願となりました。とにかく全てのお寺にお参り、お祈りして無病息災、家内安全を願い、御朱印を集めることに主眼を置いたため、秩父地域の自然や文化の詳細を後追いで学ぶという不真面目さでした。ご利益は少ないことでしょう。秋の釣瓶落としの夕方に高速を走り、関越高速から圏央道にまわり、相模原愛川から町田を抜けて夕やみ迫る頃に自宅に戻りました。

 

   34ヶ所の寺の多くは禅宗のお寺が多く、建立の時代と歴史的経緯などの点からさらに興味を抱くこととなってきました。別の季節に別の景色や佇まいを見つけに、再び訪れたい寺を中心に出かけたいと思っております。