水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

ドイツの造園専門誌から;2016

ドイツ造園家協会(BDLA;Bund Deutscher Landschaftarchitektur)の機関誌*1は、(Garten und Landschaft)でドイツの造園界における各種の情報を月刊誌として公表しているものである。2016年のこれまで(9月)に発行された同誌の概要を簡単に示し、現状を報告・紹介する。詳しくは同誌に直接当たってほしい。

ドイツにおける専門職としての造園分野が抱える問題は日本とも類似しており、その専門分野の将来的展望について本年冒頭の1月号で特集している。題して「将来の専門職分野」。第13回ヨーロッパコンペを話題に協同、協働について記事、「熱い情熱とクールな思考」と題した若手造園家の記事、現在勉学中の学生達のインタビューとコメントとの記事がある。このテーマを受けて4月号でも、「オープンスペース計画を担うのは誰」の特集を組んでいる。都市計画家、建築家との3者円卓座談会記事(オープンスペース計画での学際的協同の重要性とあり方)、ベルリン市の黄金橋(Goldene Brücken)などを事例とした記事が取り上げられている。

2月号では、難民問題とも関連するオープンスペースの在り様に関する記事(都心と郊外、芸術性のバランス、文化・習慣の原点と境界、故郷の思考、ドルトムント北地区の事例など)を特集、3月、5月号は、それぞれオープンスペース特集、3月号では光と影と題し、再開発したベルリン・テーゲルン空港、ハンブルク港プロムナード、オランダ・アンハイム駅舎、ミュンヘン市の2030年オープンスペース構想などを取り上げている。5月号は用地の空間特性(多目的、多機能)について、ウイーンの1.4ha屋上緑化と地下駐車場の例、コペンハーゲンの事例を基に解説している。

 今年はオリンピックの年、都市像が巨大プロジェクトで大きく変化した年でそれにオープンスペースも深く関わってきている。6月号では、リオデジャネイロ、ロンドン、ミラノなど、さらにはドイツ国内でのこれまでの庭園博都市を事例に、巨大イベントが何をもたらしたか、事後の検証を踏まえ考察している。

 7月号は一転して都市内における将来像として緑の在り方について取り上げている。道路空間を重要な緑のオープンスペースとして位置づけており、ミュンヘン市では4000haにも及ぶ用地を道路沿いや敷地内で緑にする構想を示し、ロンドン(2001-2013年に73%の道路で自転車通行優先)では2030年、市民14万人の自転車利用との共存を推進し道路静粛化を目論む記事がある。ほかにもミュンスター市では道路の50%を自転車優先に、ベルリン市では自転車快速路線(自転車ハイウエー計画;2025年を目途に100km)新設についての記事を載せている。8月号は5月号と呼応しさらに地球温暖化会議(パリ)と連携させて屋上緑化の新たな役割についてハンブルグ、ミュンヘン市を例に特集している。ドイツでは73ha/日のペースでオープンスペースが宅地・交通用地転換になっていることに関連し人工地盤の重要性を指摘し、フランクルト市内に7000㎡屋上緑化しスカイライン緑地として目論んでいる。アンヌ・イダルゴパリ市長は引退までに100haの人工地盤緑地を構想しているとした記事を載せている。

9月号は、ドイツにおける地域計画、都市計画の分野、都市形態としての連担都市における地域改造・整備と関連させた緑地帯、公園緑地整備の好事例であるエムシャーパーク*2を取り上げ、その歩み、目的と方法、成果・評価を明らかにしている。

*1 他の造園に関する専門誌としては、都市と緑(Stadt u. Grün)や自然と景観(Natur u. Landschaft)が知られている。

*2 Emscherlandschaftspark;1990年代から2010年まで各種のプロジェクトを重ねて地域内の緑地帯の整備・充実を図ってきている。現在2027年の国際庭園博開催にエントリーし基本計画を審議している。