水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

写生と自然(動植物)、芸術と空間 1

先月、根津美術館で行われていた「写生を超えて」円山応挙展に足を延ばした。円山応挙の名もあったが「応挙の写生」のキャッチコピーに引き付けられた。絵画、中でも日本画は昔から大変興味を持って見てきた。東大時代に知り合った家族は邦楽や日本画東京芸大で学び、社会で活躍されている芸術一家である。「庭園や造園」に興味を持ち学んで来た中で、それが美術や建築とも深い関連性があり、美しさや空間表現の考え方や捉え方に学ぶ点が多くあり、一流の作品を見ることの重要性を理解していた。有名日本画家の作品を鑑賞すると同時に、その作品で捉えられた風景=景観や自然の現象、動植物等の素描に留まらず、作品の持つ情景、雰囲気を味わうことは造園とも強い関わりがある。

 東京に出てきて岐阜県出身の日本画家、河合玉堂の美術館が青梅にあり日本画の作品もさることながら庭園、建物、その立地が素晴らしく佇まいに魅了されたことも関係している。これまでに多くの日本画家の作品を見、同時に学生を連れた日本庭園見学の実習で京都の寺社を訪れ襖絵なども多く鑑賞してきた。絵のある部屋、建物それに続く庭、空間の使われ方など連続的で一体的な関連性を味わってきた。

 そんな背景を考えながら円山応挙の展覧会を見ることにした。ほとんどの絵画は個人蔵で、普段、目にすることはできない。特に「写生帖」に描かれた動植物は応挙の観察力、描写力の素晴らしさに大変感激した。個々の素材を細かく観察し微細な部分まで詳細に描かれ、その表情、雰囲気も加え描かれている。素材一つ一つもさることながら空間的なレイアウト、配置と何も無い空間の妙(空の意味、味わい)にも魅せられる。国宝の「雪松図屏風」、重文の「藤花図屏風」に感嘆、無言。

 日常身近な対象(題材、モチーフ)のあらゆる姿を克明に写生しているが、非常に細い線、淡い微妙な色、などなど驚く点は枚挙にいとまない。彩色されたものも素晴らしいが、墨の濃淡だけで自然の細かな表情・状況を描いたものもすごい。雨竹風竹図屏風がそれである。

 読売新聞の日曜版(11月20日)、アート散歩欄にアニメーション作家の山村浩二氏が鑑賞談を次のように書いている。「物の構造を捉えるために、自分の両目で、立体で見る。本物を裏側まで見て一個ずつ形の本質を確かめることが重要」であると。

 写生の素晴らしさは、長崎にあるシーボルト記念館で見た川原慶賀の写生、牧野植物園で見た関根雲停の絵、五百城文哉展の絵、現代日本画家素描シリーズ本などから味わってきている。今回の応挙の写生画もそれに負けず劣らず素晴らしいものである。

とにかく感激しっぱなしの応挙展だった。場所は東京表参道にある根津美術館であった。