水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

禅・心をかたちに展 を見て  

晩秋の曇り空、時折吹く風は肌寒く、思わず首を窄め銀杏の落ち葉で真黄色に染まった径を博物館平成館目指して歩きました。白隠慧鶴描く「達磨像」の巨大なポスター*1が目立って会場への道を示していました。

 展覧会は国立博物館平成館2階、臨済宗黄檗宗連合各派合議所が主催し5つのテーマに区分され、全国にある同宗の寺などが所蔵する307件の禅に関する名宝が展示されていました。展示公開最後の日であったため、寒空にもかかわらず多くの人が訪れていました。入口を入った直ぐ正面に、ポスターに使われている白隠禅師が描いた大きな達磨像(国宝)が迎えてくれ、その迫力と構図の大胆さ、色遣いのすごさに圧倒されました。同時に、以前学生を引率した庭園見学で天龍寺竜安寺の玄関入口で見た屏風絵の達磨像を思い出しました。

 この禅名宝展では、国宝書画22件、重要文化財(重文)102件を含め全部で307件の名宝が展示されていました。全部を味わって時代や人、寺院の場所などじっくり考えながら見ていたらとても1日では見終わらない内容と数です。

展示は①禅宗の成立、②臨済禅の導入と展開、③戦国武将と近世の高僧、④禅の仏たち、⑤禅文化の広がり、の5つに区分され、臨済宗黄檗宗の各本山が所蔵する高僧の肖像画、書、仏像、絵画、工芸が出展されていました。

 展示物は京都の寺院が中心をなし、北は栃木、南は大分の諸寺院から集められ、その上普段、各寺院の奥深く本堂などに安置されていて見ることが出来ないものが多く、このような企画でしか実際に目にし学ぶことが出来ない絶好の企画でした。

 禅宗は中国から伝わった仏教の一派であり、鎌倉から南北朝時代にかけて臨済宗を中心に広まったとあります。江戸時代には黄檗宗が明の時代の文化と共に日本に入り広まりました。前にも書きましたが、日本庭園は仏教の教えと深い関係があり、その意味で禅宗の庭園も同様、いろいろな展示物を見ながら聞き慣れた人物の名が出てきたり、像が出てくると、より真剣に仔細に見入ってしまいました。

 白隠禅師、蘭渓道隆一休宗純禅師、隠元禅師、亀山法皇、古岳宗旦、以心崇伝、夢窓疎石足利義満などなど。書の賛の読みや意味は理解できないものの書体や筆遣い、墨の濃淡など見所はいっぱいでした。

戦国武将と禅宗の関係では、江戸時代に多くの肖像画が描かれ、禅宗に帰依し関係した寺院に収められていることがわかります。禅文化の広がりでは、主に「茶」に関連して説明されており、茶の始まり(明庵栄西)から禅と茶の関係、茶道具、書画が展示されていました。文化の広がりの中で「庭園、枯山水」などが無かった点はやや残念な気がしました。

 国宝の絵画では、「達磨像」「慧可断臂図」「瓢鮎図」「蘭渓道隆像」、重文では

牧谿の「龍虎図」「芙蓉図」など見たことが無かったものを見ることが出来ました。

特別に伊藤若冲の絵が2幅展示されていました。若冲は30代に禅に帰依し、京都相国寺の高僧と親交を結び絵を描いたとされています。鷲図と旭日雄鶏図の2幅は、素晴らしい若冲の作品で、構図の大胆さ、色遣いの素晴らしさ、超精密微細の表現には言葉がありません。若冲の「写生帖」を見たくなりました。雄鶏図は、来年の干支・酉に因んで絵葉書を買い求め、感激・感動の余韻を頭と胸に帰途につきました。