水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

カンボジア見聞記 No.4

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 シェム・リアップ滞在5日目、カンボジアの人々の暮らしを見るためにトンレ・サップ湖(Tonle Sap)沿岸の集落(水辺集落・雨季には水上生活集落)に出かけました。具体的な集落名はわかりません。シエム・リアップ市内から南に車を走らせ湖近くにあるカンポン・プロック(Kampong plouk)という村に向かいました。ここには100軒近い(?)家屋が立て込んで並んでおり、全て高床様式でした。訪れたのは2月、乾季の最も雨が少ない季節で、水位が最も低い時期でしたので、高床家屋は見た目にも異常に高く、家を支える数多くの柱がそのまま土台に繋がって林立し、家と家の軒や庇が繋がり、重なるように建っている蜜居(集居)です。集落はトンレ・サップ湖畔に連なる水路を1-2km入った小高い部分に位置し、集落の広場や寺院と水路(乾季の時の)の高低差は10-15mありました。雨季でも集落中心部の寺院広場や中心広場は冠水せず地区のコミュニティー機能を果たしているようでした。各家は船外機を付けた大小の船を有しており、観光船であったり漁業に使ったりといった様子でした。来訪者が多ければ観光船として、客が少なければ猟に出るといった感じです。湖に出るまでの入り江(河口部)は魚類を捕獲するために網や竹筒・網筒を水際部に設置したり、投網で漁をする人がかなりいました。淡水魚の料理が多くなり、生魚の他、干物や魚醤が作られていました。料理に多く利用される川エビの仲間が多く獲られ、天日乾燥し殻の部分を取り除いて身だけにし、鮮やかな赤色に染め商品を作っていました。別の集落ではキャッサバの天日干しを道路脇でやっているのも多く目にしました。乾季には乾季の自然条件を生かした生活作業、仕事があるようです。

 高床式家屋を見たときに余りの高さに驚きましたが、雨季にはそれだけ水位が上がるということを物語ります。トンレ・サップ湖は国際河川のメコン川と繋がっているため、そのメコン川の流域面積が地球規模で広大なため雨季に10数mの水位上昇は理解できます。5-10月が雨季のようですので半年間は水面面積が乾季の10倍になるとのこと、その景観を想像することはちょっとできません。でも高床の高さを見ると頷けることでもありました。観光船は客の人数によって大型から小型までいろいろ。客が多いと船が入り乱れ、川の中で渋滞が起こってしまいます。船頭は巧みな手足捌きでぶつかることなく進めていきます。湖に近い所は一面のマングローブ林、日本の亜熱帯島嶼にあるそれとは樹高の違いが一目瞭然。水面上の高さ7-8mの樹林。雨季には樹冠だけ出しているのかと想像しましたが、実情はイメージできませんでした。湖の上には観光船、遊覧船の仮停泊場(船の係留ポイント)があり、店や簡単な食堂などもあり、さらに小母さんたちによるマングローブ林内の案内小舟貸しがあり、大声で呼び込みをしていました。驚いたことにワニの生簀があって、何のためかと一瞬考えてしまいましたが、まさか食するのではないでしょうね。

 高床式を構成している材木は、材が真直ぐで太さもあり腐り難いと思われ、それ以外の用に使うと思われる木々も真直ぐです。南洋材の素直な育ち方がその形からわかり、日常生活での多様な使われ方を理解することが出来ました。

発展途上国での地域開発、地区整備はなかなか難しい問題が沢山あります。現在の人・物・時間のスケールでは、あまり問題が無いように見えますが、アンコール遺跡の施設開放、利用と同じように、今後観光客の増加が予測される中、利用者数と施設規模、そのマネージメントでいろいろ問題が生まれ対応が難しくなりそうです。

生活水準の向上と生活文化財、景観保全の調和ある発展が望めるかどうか、住民の意識、考え方に握られています。この問題・課題は洋の東西を問わず、また先進国、後進国の違いこそあれ共通するもののようです。先進した者として同じ間違い、誤りの轍を踏まないことを祈るばかりでした。