水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

展覧会巡り  4

 不染 鉄という日本画家を知っていますか? 新聞の記事(7月22日の読売新聞朝刊、時の余白に;編集委員芥川喜好)の見出し「放浪の果てに浄土あり」に魅かれて読み興味を持ちました。それは日本画家、不染 鉄の展覧会(没後40年、幻の画家「不染鉄」展;東京ステーションギャラリー)に関しての批評記事で、「放浪」や「浄土」に目を取られ読み進めたら、不染の作品と人生に光を当てた展覧会への招待文でした。美しく改修復元された東京駅ギャラリーでの展示にも魅かれて出かけてきました。

 

 安野光雅という画家はご存知ですか?いろいろなファンタジー溢れる風景や物の絵本を出している作家です。私は風景を描くことに少なからず興味を持っていましたので、安野の絵本は以前から身近に買って持っていました。きめ細かな風景描写、絵の中での多様な人物表現、これまでどこかに忘れてきてしまったような景色、佇まいなどを見事に描き出しています。

 不染の絵にも、それに似た雰囲気や描写法がありました。詳細で緻密・繊細な線描表現(細い面相筆で描かれる線は、どこか浮世絵美人の髪に似て)、ノスタルジックな民家や田舎風景、大胆な構図(軸装でも扁額でも)、全く違和感のない抽象表現(波や岩、雲など)それにもまして目立たない人や生き物の挿入、本当に久しぶりに作品を見て感激し堪能しました。明治・大正・昭和と激動の時代に生涯を送り、波乱にとんだ人生(主に海と古都を愛して過ごした84年)を送り、描き続けた人のようです。

 回顧展が東京で開かれるのは初めてで今回は絵画から陶器の絵付まで120点が出されていました。中でも昭和40年代(70歳過ぎ)に書かれたはがきの絵はボールペンで書いた絵に着色されたもので、文章と相まって大変味のあるものでした。私も似たことを時節の葉書で描いていますので興味深く魅入ってしまい、気が付いたら3時間余り経ってしまっていました。

 

 この展覧会は8月27日までやっています。造園・緑地の関係者や興味のある学生諸君にぜひ見てほしいと思います。

 会場の東京駅ギャラリーは東京駅丸の内北口にあります。東京駅は2003年、国の重要文化財に指定され、2012年(2007-2012)には全面改修(保存・復元)されました。東京駅は不染 鉄が生まれた(1891)ころ東京市区改正条例で東京駅が決まり(1889)、ドイツ人バルツアーや辰野金吾が設計(1910年までに)1914年に開業しています。ギャラリー内部の階段部は煉瓦の形、積み方、大戦被災の跡など目にし触れることが出来る展示ともなっており、修復工事の様子も見ることが出来ます。