水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

我が家の庭の歴史; 身近な緑とは 2

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 庭や公園の竣工時には植栽工が完成形で納められる場合が殆どです。建物周りが植物(樹木や草花)で埋め尽くされ、ともすると低木が密植、植え過ぎであったり、高木の支柱がやたらと目立って外部造園空間の美しさが台無しになる場合も少なくありません。また、時間が経過すれば植物は成長し枝葉を茂らせ、丈を延ばすのですが、それが制限され植栽による美しさの演出が台無しになったり、成長管理(維持管理)に支障が出てきたりします。「景」が落ち着くには10年近くかかるし、そのためにその期間の維持管理は大変重要になります。工事が終了し持ち主に引き渡されてしまえば関係は無くなりますが、施工者としては、その後も作品には関心を持って覗いてもらいたいものです。作品に対して長い目で育て、作り上げて行く気持ちや考えが必要だと思います。

 

 自分の持ち家の小さな外部空間では、とても最初から高木を用いて修景する空間的余裕は無かったのです。限られたスペースで将来的に纏まった緑を作り出すためには小さな苗木を植栽し、それを時間を掛けて管理育成して作り上げることが必要でした。40年近く身近で適切に維持管理してきた姿が現在のボリュームある緑を作り上げています。ドウダンツツジの生垣は高さも厚みも、さらには季節的美しさも、その樹木本来の特徴をいかんなく発揮しています。

 当初、小さなヒメシャラやアラカシの苗木も狭い場所にも拘わらず10mほどの高さまで成長し、花や芽出しの美しさ、適切な遮蔽の機能を果たしています。高木になった後は毎年適切な剪定(枝抜き、徒長枝剪定)をして現状を維持しています。

 

 家が代替わりして他の人の手に移った後、この纏まった緑はそのままの姿を維持することはできないでしょう。家を建て直す工事に伴って消えて行く運命にあります。それは個人家屋に限らず他の建物、建物群でも同じでしょうか。

 時代を重ね残す価値のある緑は残したいものです。

 

 小さな緑の充実を基本として身近な街づくり、緑のネットワーク、多様な緑の構成、時代と歴史を生かした緑のコミュニティーづくりなどが理解され、個人レベルでの緑の作り方、近隣レベルでの緑の充実、「繋ぐ緑」の重要性、時間・時代を感じさせる「緑の網」づくりが注目されることを期待したいのです。