水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

展覧会巡り  6 

 芸術の秋、食欲の秋、天高く馬肥ゆる秋、読書の秋、いろいろ例えられる秋になりました。今年の夏は本当に不純な天気が続き、雨が多く晴れ間の極端に少ない夏でした。

昔、大学院時代に知り合った芸術一家の方と親交を深めており、毎年公募展の招待状を戴きます。大学で働いていた時代は何かと気忙しく慌ただしい毎日を過ごしておりましたので、展覧会に足を運べなかったのですが、退職してからは時間もあり例年、作品を拝見しています。今年は「院展」が東京上野の都立美術館、「二科会展」は六本木にある新国立美術館でした。

 院展東京美術学校(現;東京芸術大学)を辞した岡倉天心が中心になり明治31年(1898)設立した研究団体で、現在は公益財団法人日本美術院になっています。絵画、彫刻がありましたが、現在は日本画の公募展(秋)と春の院展になっています。

学生時代から、造園に関連して美術・絵画の素養や知識が必要と感じ、美術鑑賞や絵画教室に行ったりしましたが、今は専ら絵画鑑賞だけになっています。

 学生時代に見に行った院展では、今は亡き日本美術院の錚々たる有名画家(前田青邨奥村土牛小倉遊亀平山郁夫ら)が出品し、それは見事で豪華な展覧会でした。時代は確実に移って来ています。近年まで歴代の理事長も大作を出品し素晴らしい展示会でしたが、今年の秋は大御所の出品が少なく幾らか寂しい感じがしました。

 院展発祥の日本画は「朦朧体」(輪郭線を用いず色彩の濃淡によって空気や光を表現する技法)描法で、後に大きなうねりとなり海外で大きく評価され、今日も伝統的手法として位置づいています。岡倉天心が発祥した日本画の研究所第一部(絵画)は昭和25年に茨城県五浦に移り、その地で横山大観菱田春草、下村観山、橋本雅邦らが作品作りと研究に励んだとされます。この地の施設は文化財指定され、造園研究室の、今は亡き吉川 需先生文化庁におられる頃から周辺の景観、庭も含め保全、改修に尽力され、島田正文先生も関係されています。日大の造園研とも少なからず関係のある場所です。

 

 絵画は物を正しく、忠実に観察し写しだすことにはじまります。モチーフが何であれ「写生」が基本になると思います。私も静物画スケッチが好きで時々葉書などに描いています。

 今年前半には暁斎不染鉄等伯雪舟などいろいろ絵を見て、改めて日本画の良さを味わいました。

 

 二科展は知人が彫刻家であることから六本木の新国立美術館で展示公開されていました。この美術館は六本木(青山墓地日本学術会議乃木神社に近く)で建築としてもユニークな美術館でした。彫刻の部屋は木彫があり、木の香りが漂う、何とも心地よい空間でした。作品の素材は自然木の一木作品あり集成材作品ありで楽しく鑑賞できました。

 この彫刻家には若く無名の時代(1980年頃)に、研究室で創設した「横山賞」横山光雄先生の退職を記念して設けられた賞)の賞品(ブロンズ製の小皿)を作っていただきましたが、今では二科会の重鎮(理事)でとても作っていただくこと等無理です。

 一日、上野の山と六本木の緑の中で素敵な時間を過ごすことが出来ました。

 

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