水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

展覧会巡り  7

 芸術の秋は絵画展、科学展など多数の催し物が企画され、大都市東京の大小、公私を織り交ぜて、いろいろな美術館、博物館で開催されています。今回は日本画の代表的な「琳派」の作品を見ることにしました。「琳派」は京都で活躍した尾形光琳を中心とした流派の絵画作品を総称します。江戸時代、京都と並び文化の中心「江戸・東京」においても「琳派」の画家たちの活躍、作品は目を見張るものがあり、今回の「江戸の琳派芸術」と題して絵画展が開かれています(11月5日まで:出光美術館東京丸の内)。

 

 その中心的人物は、酒井抱一と弟子の鈴木其一でしょうか。出光美術館が所蔵する抱一らの数多くの作品34点が公開展示されています。展示は5つのテーマに分けて行われ、①光琳へのまなざし---<江戸琳派>が<琳派>であること(5点)、②<江戸琳派>の自我---光琳への憧れ、光琳風からの脱却(15点)、③曲輪の絵画---<江戸琳派>の原点(4点)、④<琳派>を結ぶ花---立葵図にみる流派の系譜(5点)、⑤子弟の対話---抱一と基一の芸術(7点)でした。

 ①では、やはり夏秋草図屏風草稿と風神雷神図屏風でしょうか。夏秋草図は草稿で本体は重要文化財として上野国立博物館にあります。「風神雷神図屏風」と言えば、あの有名な俵屋宗達ですが、その原画を尾形光琳が模写して屏風にしています。その屏風の裏面の表装に抱一のこの絵が描かれたようです。抱一の絵で、夏草と秋草がそれぞれ雨と風を背景として描かれ、それは表裏一体として光琳が描いた「風神雷神図屏風」と深い関係にあると説明されています。つまり元々表裏一体であったものが別々に表装され屏風になっているようです。その性で夏草は雨に濡れた様を見事に表し、秋草は強い風に煽られ揺れる様を表しています。そうです、表の風神と雷神を意識して裏絵として描かれているとのこと。説明され改めて屏風絵を見ると「なるほど」と首肯し合点がいくのは妙です。初めて知りました。 入口を入って最初にこの二枚が並んでいるので良く理解できました。

 ②では鈴木基一(1796-1858)の三十六歌仙図と秋草図屏風が秀逸でした。抱一門下の俊才で抱一に肩を並べる画力がよく分かる作品群でした。36人の歌仙それぞれが穏やかな笑みを湛えそれぞれ気儘な姿で描かれています。秋草図は抱一の作品を髣髴とさせるものでした。

 ③では抱一が名門武家で姫路城主酒井家の次男として生まれ(1761)、20代まで兄の庇護も受け江戸で奔放な生活をすごし文化人として成長した一端が絵画としてありました。同朋の鳥文斎栄之の絵と同じ吉原の遊女(27才の作品)や風俗を描いています。

 ④は植物の芙蓉、立葵の絵でした。尾形光琳・乾山兄弟の命月(6月)の花として芙蓉・立葵はいろいろな形で描かれています。光琳・乾山兄弟への思慕の深さ、畏敬の表れがわかる展示です。

 最後のブロックで感激したものは、抱一の「十二か月花鳥図貼付屏風」です。日本画に限らず絵画では「花鳥風月」「草花」など四季折々をモチーフに描いていますが、この作品は、既に19世紀に「ビオトープ」の捉え方(いろいろな生き物と日常生活)があったことを示していて感激しました。

 1月はカラ類、ツバキ2月はスズメ、ヒバリ、ナズナ3月は桜とルリビタキ4月は牡丹、アゲハチョウ5月に菖蒲とシギ6月は紫陽花とヤンマ(トンボ)7月は向日葵、朝顔そして茎の隙間にカマキリ8月に月、ススキ、キキョウの下に鈴虫9月は菊とカラ類10月は柿とメジロ、11月にヨシの間にサギそして12月には鴛鴦の周りに梅とヤブコウジ

 身の回りの身近な生き物を季節の移り変わりに描き、変わりない穏やかな生活を送る姿、その絵を愛でる人の心持に、今の自分の生活を考えてしまいました。

 

この展覧会の前に、今評判を呼んでいる映画「関ヶ原」を見て、300年近く続いた江戸時代の原点をあらためて感じ取りました。江戸時代:17-19世紀の日本文化の奥深さと素晴らしさを再確認しています。