水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

展覧会巡り  14  オリバー・オースティン写真展

 懐かしい写真と何か引き付ける見出しに飛びついて展覧会を見に出かけた。見出しは「戦後まもない日本の風景」とあり(3月21日読売新聞)、添付の写真は丸坊主、草履ばきの笑顔の子供たちが車を追って走る姿であった。1944年生まれの自分にとって、ほぼ同じ時代の子供時代、風景の懐かしさもあったし、外国人が見た戦争直後の日本の姿、風景、人々の暮らしの写真展であり彼が、何を、どのように捉え写したか見てみたい気持ちが強かった。

 

 写真を撮ったのは、オリバー・オースティン(Oliver L. Austin jr.)1903年生まれの鳥類学者、大戦後日本に進駐したGHQ(連合国軍総司令部)の一員でNRS(天然資源局)野生動物課長として1946年9月来日(43歳;2児の父)、以後1950年2月までの6年間、日本各地を回り野生動物資源調査をしている。今回の写真展はその間に彼が撮影した戦後の風景、戦後間もない日本人の暮らしぶり(東京中心)の様子であり、選ばれた70枚余の写真であった(実際は1.000枚以上の写真から)。

 新聞紙上の写真以上に興味を引いたのは写真展の解説書(表題:希望を追いかけて)の表紙である。それは表参道通りの風景で、右側に今は無くなった3階建ての同潤会アパートがあり道の下った先に明治神宮の杜を遠く望む写真である。神宮寄りの街路樹にはケヤキの大木が見られるが、明治道りから手前は殆ど街路樹も無く、僅か数本が新たに植えられた状態。自転車の後ろにリヤカーを付け坂を引いて登る人の姿が、現在のケヤキ街路樹で緑が豊かな通りの景観と違う、焼野原の後の姿である。緑を育てるには場所と時間が大切だ

と改めて痛感した。

 他に彼が撮影した東京都内あちこちの風景写真(道路含めた写真から)を見ると、当時(東京大空襲以後3-4年)、都心部や山の手では街路樹の緑や屋敷の緑が目立った状態か分かった。

 彼は鳥類学者であり滞在中6年間に北は北海道天売島から南は宮崎県青島まで、全国各地を日本の鳥類学者や関係者(山階芳麿、黒田長禮、蜂須賀 正、黒田長久ら)と調査していたことが写真から分かるし、日本の専門家と共にバードデー(今のバードウイーク)の制定や国鳥「キジ」の指定にも関わっている。さらに、剥製づくりの為、カモの狩猟を行ったり、野鳥を食する文化を記録するため築地の鶏屋(鶏藤)の店先にあるスズメ、ウズラ、ツグミ、カモ類の生肉の写真も撮っている。

 戦後間もない日本はこの後、希望や夢の実現に向けて復興の道を一挙に駆け上がって20世紀の発展に繋がっていった。この写真展を通して戦後間もない東京や日本の地方の姿と鳥学会を知ることができる機会となった。

 

オリバー・L・オースティン写真展は「希望を追いかけて~フロリダ州立大学所蔵写真展」として東京九段下、昭和館において3月10日~5月6日まで開催されている。入場無料:

f:id:nu-katsuno:20180330162955j:plain