水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

外国友人訪日談

  1989年(平成1年)、今から30年程前になります。当時の埼玉県野鳥の会主催による「西ドイツ自然環境調査」の計画立案および実施視察のコーディネートに携わりました。日本大学の関係者が同野鳥の会におられたことから、私が加わることになりました。私は、その前から西ドイツの造園緑地に関する専門誌を紐解き、都市内及び都市周辺部での公園緑地整備と自然再生の動きに注目していました。この時代まで西ドイツ、バーデンヴュルテンベルク州カールスルーエ市は殆ど公園緑地の分野では注目されていませんでした。しかし、それまでには市内に日本庭園が造られており、著名な上原敬二先生(東大卒、東農大教授;日本造園学会生みの親)も1967年、連邦庭園博に際し造改修整備に深く関与されており、日本と深い繋がりがありました(補1)。

 1989年訪独の折、それ以前から都市の公園緑地で自然再生や復元に積極的施策を取り、多くの優れた事例を進めていたカールスルーエ市公園局と事前にコンタクトを取り、訪問しました。その視察報告結果は事例写真の多い本としてまとめられ公表されました**

 それ以来、わが国でも注目されるようになった「都市内における自然復元再生」の好事例都市としてカールスルーエ市が上がる所となり、多くの日本視察団、訪問者が詣でてきています。当時の公園局長;ホルスト・シュミット氏(Dir,Horst Schmidt)ならびに当時の部長ヘルムート・ケルン氏(Hermut Kern)とはそれ以来もう30年に及ぶ交流を続けて来ています。

 シュミット氏が退職された後、ケルン氏が局長となられ親交も続いていますが、昨年、ドイツ造園部局長協議会(Gartenamtleiterkonferenz)はカールスルーエ市に「銀杏賞;Ginkgo Preis)」を授与し「都市における公園緑地拡大・発展施策」を表彰しています。

 

 このシュミット氏は引退後、それまで興味を持っておられた日本庭園に対し、度々来日しいろいろな庭園・公園緑地(新旧取り混ぜ)を視察され、その専門的理解(歴史文化的、造園技術的)を深めて専門誌に発表されてきています。ここ数年来、早春(3-4月)に日本庭園を主とした視察団の専門解説者として来日され、参加者を案内しておられます。

 今年(2018)も視察団に先立って3日早く東京に来られ、都内の庭園、緑地を視察されました。案内役を任され、大手町の森、旧三菱三号館中庭、東京ミッドタウン日比谷、ホテルニューオオタニ庭園などを視察されました(添付写真)。

 視察団は東京、京都、金沢、広島などの都市を回り日本庭園を中心として歴史的遺産、自然・文化景観を視察され帰国されました。 

 

*埼玉野鳥の会:後に会から分かれ日本生態系協会にも発展している

**詳細は、「ビオトープ・緑の都市革命」埼玉県野鳥の会、ぎょうせい、1990 参照

補1:カールスルーエ市で故上原敬二先生が1967年、連邦庭園博に合わせて市立公園(Stadtpark)の日本庭園改修時に設計・施工指導されて造られ、池、四阿、鳥居、飛び石、灯篭など、桜、楓、竹などが植栽されている

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