水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

孟宗竹と淡竹、筍

  数日前、以前勤務していました日本大学の外部研修施設【富士自然教育センター;FNEC)を経由して現地産の淡竹の筍を戴きました。早速簡単に灰汁抜きをして数種の料理で戴きました。とても懐かしく、美味しい夕食でした。懐かしいというのは、子供の頃、生家の屋敷内に竹林がありその構成種が淡竹で、筍の季節になると藪に入って筍を取った記憶があります。味噌和えや煮物は本当に美味しくこの時期の山椒の若芽や若葉を添えて食べるのが通例でした。

 そんな子供時代の記憶を辿りながら、以前FNEC近くの農家に孟宗竹の筍掘りに行ったことも思い出しています。FNECに勤めておられた伊藤さんの知人が所有されている竹林で、土から僅かに頭を出した筍を掘り出した情景です。

 孟宗竹は中国から渡って来て本州に広く分布する代表的な竹林の構成種です。筍は頭を出す前に掘り取られ旬の初物として料亭で出される珍味でもあります。「雨後の筍」の例え宜しく、その成長の早さには目を見張るものがあります。筍のうち、孟宗竹に次いでやや遅れて出てくるのが淡竹(ハチク)で、味は孟宗竹ほどではないですが、こちらも味噌和えや味噌汁の具として珍重されています。淡竹にさらに遅れて真竹(マダケ)がす~っとした細い筍を出します。筍の味は芳しくないようです。「天は二物を与えず」と言うように何かに特化してその特徴を生かしていると言った方が良いでしょう。

 味の良い孟宗竹の筍は煮て良し揚げて良しで、根元から穂先まで料理に使われますが、竹の稈は割れ筋が乱れ使い難いです。でも丸竹は太く適期に切り出せば材もしっかりしており多用途(花筒や竿管から柱・支柱まで)に使われています(中国に初めて行った時、建築現場の足場材として、繋いで繋いで高所まで組んで使っているのを驚きを持って見た記憶があります)。最近では、竹林維持管理放棄による里山景観の変貌がいろいろ問題となっています。

 真竹は稈の筋目が整っており直線で割り、裂き易く竹籤から傘骨、茶筅さらには色々な簀子(和紙を漉く際の簀子)等いろいろな竹細工まで、これまた多用途に使われています。節目が二重線(鞘の付け根)で孟宗竹の一重とは違っています。日本独自の竹製品(工芸品や竹細工)もありますが、もともと竹の原産地が中国であることから、昔、台湾にある故宮博物館で見た竹細工(手の込んだ竹籠や竹で作った昆虫等)の見事さ、素晴らしさに驚嘆したことを思い出しました。

 (インターネットを見ていましたら高知県須崎市にある「竹虎」のHPがあり、詳しく書かれています

 淡竹の筍の先端部分は、ややグロテスクに曲がりくねり、目を凝らして見ると一種異様です。鞘の縁や先端部に赤茶けた微毛が多くあり、また皮鞘に細かく幾筋もの線が模様となって見られます。竹の姿を示すように直線で先端部まで伸びる「筋」は単子葉植物・イネ科を物語っています。

 貰った筍を見て絵心を擽ぐられ、「絵手紙」のモチーフとして描いてみました。

   右は数年前の孟宗竹の絵、左は今年(2018)の淡竹の絵です。

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