水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

超一流には超一流の喜びや苦しみが、

 2017年制作、フランス映画「私は、マリア・カラスを見ました。物凄く感動し、館内に響く彼女の歌声で体中が痺れる感覚を味わいました。映画全体を見てからの感動ではありません。始まってしばらくして、彼女のアリアの場面となり、その歌声を聴いただけで素晴らしさに鳥肌が立ったのです。 

 どうしてかわかりませんが、マリア・カラスが歌う歌声の美しさ、映し出された歌う表情に自然と感激している自分がいました。極端に言えば、その歌声を聴いて感動で目頭が熱くなりました。言葉の意味は分かりません(字幕に訳詞が表示されていましたが)。その文字を追いかけるより、歌声に酔いしれてしまいました。流れるような歌声・メロディーの美しさ、情感を表す音の強弱は顔の表情と相まって見る者を引き込んでしまいます。映画は、歌う彼女の顔の表情を捉え、劇場で離れた席からでは見ることのできない細かい顔や体の動きを映し出していました。映画の中で歌われたカラスの生歌唱の舞台は下記の通りです。

 プッチーニの歌劇「トスカ」から、”歌に生き、恋に生き”

 ベッリーニの歌劇「ノルマ」から、”清らかな女神よ”

 プッチーニの歌劇「蝶々夫人」から、”なんて美しい空”

 ヴェルディの歌劇「椿姫」から、 ”さようなら過ぎ去った日々よ”

 ビゼーの歌劇「カルメン」から、 ”恋は野の鳥”

 プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」から、”私のお父さん”

 

 ”私のお父さん” は映画の最後、エンドロールの画面で歌われ、彼女の素晴らしい歌唱、歌声を見て聞いて終演となりました。53歳の短い人生の中、世界を股にかけファンを虜にした歌姫;マリア・カラス。 映画監督トム・ヴォルフは、未公開映像や音源を用い、ドキュメンタリータッチで制作し、マリア・カラスの素晴らしさ、凄さ、美しさを描き出すとともに、その後ろにあった歌や劇、生き様(結婚や恋愛など)における彼女の苦しみ、辛さ、悲しみを思い描き想起させ、作り上げていました。

 映画を見て、彼女の生き様が、まさに歌劇に表されるシナリオのように波乱に富み、純粋さと真剣さで彩られた素晴らしいものだったろうと思いました。 

 

 マリア・カラスはニューヨーク生まれ、ギリシャ語名を持ったギリシャ系のアメリカ人声楽家(1923-1977)です。クラッシック音楽界で世界的に有名なオペラ歌手、15歳でアテネ王立歌劇場でデビューし、53歳パリで急逝するまで一世を風靡した世界的なプリマドンナ(20世紀最高のソプラノ歌手)です。並々ならぬ歌への情熱とそのための練習、体調管理、喉の状態の維持など、表には表れない、大変な努力が隠されています。最もよい状態で、最高の出来栄えの歌を披露したいと思う、最高級歌手としての自負心が、満足のいかない歌は聞かせられないとして一幕だけで公演中止にした事件は理解できるものがあります。恥ずかしいものは見せられない、聞かせられないという思い。

 

 映画のパンフレットには次のような文章で紹介されています。

 「楽史に永遠に輝く才能と絶賛されたオペラ歌手、マリア・カラス。一度聴けば忘れられない世界に一つの歌声と、高度なテクニックを自在に操る歌唱力、役柄と一つになる女優魂、さらにエキゾチックな美貌と圧倒的なカリスマ性で、聴衆をとりこにした不世出のディーヴァだ。(映画のパンフより)」

 

 私が大学生時代ドイツ語を習っていた頃(1965-70年)、エリザベート・シュヴァルツコップという、こちらも世界に冠たるドイツリートのソプラノ歌手がいて、私も時折オペラのアリアなどを聞いていましたが、その時にソプラノ歌手の双璧としてマリア・カラスがいました。マリア・カラスは後年(1958年以降)声の不調などによりオペラへの出演がなくなり、個人的なリサイタルでの発表が中心になっています。1973年と1974年には来日し各地でリサイタルをしています。

 折しも1973-74年、私はドイツ(当時は西ドイツ)奨学生として1年半ドイツへ留学しており、彼女の日本公演は聞くチャンスはありませんでした。  

  

 映画を見ての感想は、人間としての最も素晴らしいことは、「愛すべき人がいること、好きなことに頑張れること、人に感動を与えられること」でした。

 その感激と感動を忘れることができず、2度もこの映画を見ました。これは初めてのことです。これまでにも感動した映画はありますが、2度も見たいと思ったのは、今回のこの映画が初めてです。機会があれば「もう一度」の気持ちがあるくらいです。

 知人でいつも私の髪を手入れしてくれるママさんは趣味で声楽(独唱)を習っているそうで、この映画を推奨しましたら直ぐに見に行き、鑑賞後感激のあまり、その足でベストアルバムを買い求めたとメールが来ました。

    いつかそのアルバムを借りて聞いてみよ~っと。

 

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