水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

都市近郊の緑地 2

 平成最後の週、天候が安定しないのは残り少なくなった平成を惜しむかのようです。4月25日に横浜市新治の森へ、そして29日には町田市薬師池公園へ出かけてみました。

新治市民の森は、以前のブログに書きました寺家ふるさと村同様、横浜市で東京都町田市との市境域に残された雑木林と谷戸水田を中心とした広大な緑地です。面積は67.2ha、市内で最も大きな緑地です。朝から蒸し暑く、霧雨が残る週日でした。緑地の北端にある新治里山公園にいはる里山交流センターは、平成12年3月に開園した市民の森の中心施設で、20年以上にわたる時間をかけた地味で着実な活動の拠点として整備されています。JR横浜線十日市場駅から徒歩15分くらいの所に位置しています。横浜市緑の7大拠点の雄としての規模があり、近接して「三保市民の森」、「ズーラシア横浜動物園」、「横浜動物の森公園」、「県立四季の森公園」と繋がる緑の回廊ともなっています。

 幾つもの谷戸から成っており、南北に連なる「マンゴー」型をした森です。南北に連なる尾根へ入り込んだ多数の谷戸(穴谷戸、旭谷戸、むじな谷戸、鎌立谷戸、満倉谷戸、常見谷戸、菖蒲谷戸、池の谷戸、稲荷谷戸、西谷戸)が東西に大小入り組んで複雑な微地形を生み出しています。谷筋の低地は以前まで水田として利用されていましたが、現在は次第に少なくなり(場所的には、谷戸田を守る会によって保全活用されています)所によって湿原、ため池など昔の低湿地が蘇っています。

 低い丘陵台地は雑木林が主でスギ・ヒノキ林に混じって常緑広葉樹の自然樹木が残っています。この時期、落葉広葉樹の芽吹きと合わせ、大変美しい若葉が茂り一段と美しさを見せています。林内では陽射しが日増しに弱くなりはじめ、林床で落ち葉掻きや低木伐採が行われていて木漏れ日の下では、キンラン、ギンラン、エビネなどの野生ランが咲いています。雑木林の二次林では、この林内、林床管理が大変重要です。

 湿って陽があまり射さない谷戸頭の斜面にはイノデ(羊歯)の一大群落も見られます。表土が薄く乾燥し人の踏み付けがある尾根筋の道筋では、ヒノキの根が浅く広く伸びている状況も見ることができます(添付写真参照)。 

 谷戸奥の湿地(水田跡)には、水が溜まり、開水面とショウブ、キショウブなどが生育するアシ原が見られます。こういった環境(ビオトープ)では、生き物として両生類や水生昆虫、トンボはじめヘビ類、爬虫類の生息も容易に想像ができます(添付写真参照)。

 この森の起伏に富んだ微地形、変化に富んだ園路などは四季折々に多様な自然を観賞することができ、さらに先に示した隣接緑地とのネットワークを使った散策ルート、ハイキングコースとして位置付けられます。

 この日も雨模様の天候にも関わらず「歩く会」や「自然と植物を観賞する人、楽しむ人」など多くの人たちが訪れていましたし、NPO法人の人達、谷戸田を守る会の人達が日常の活動を行っていました。

 森の成り立ち、あるべき姿を身近に見聞きし感じ取って、いつまでも維持され利用されることを祈るばかりです。いろいろな希少植物、この時期しか見ることができない植物を見ることができた一日でした。

 

 4月29日は、町田市の薬師池公園に出掛けました。10連休の始まりで人出は余りないのでは、と想像して行きましたらドッコイ、自家用車での家族連れや高齢者が多く、また折からのボタン園、エビネ苑では花の見頃と相まって賑わっていました。

 この公園も多摩丘陵谷戸地形と文化財(薬師堂や古民家)があり、地形を生かした開花植物(アジサイ、ツバキ、ウメ、モミジ、ツツジ、フジ、ショウブ、ボタン・シャクヤクなど)の配置で四季変化に富んだ公園になっています。斜面の雑木林にはキンランが沢山開花していました。

 少し離れた「エビネ苑」では、色々な花色と花型のエビネランが集められ、スギ・ヒノキの林床に植えられ定着し、沢山美しく開花していました。高松宮殿下から贈られたキエビネコーナーがあったり、今では絶滅危惧種となった「クマガイソウ」の区画もありました。同好の人たちによる維持管理の参加がどの公園・緑地でも行われるようになってきており、頼もしく感ずると同時に、そのグループをリードし、コーディネートする人の重要性が脳裏をかすめました。

 

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