水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

海外雑誌でのニュース 7-1

  季刊誌「Natur in NRW」und Strukturdefiziteが来て時間がたってしまい

海外雑誌のニュール報告が遅れて申し訳ありません。2019年の第4号の内容は

以下の通りです。

1-1)Zustand der Seen in NRW

1-2) Strukturdefizite und Bewertung (von kuenstlichen) Seen

2) Feuchtwaelder (Anpassung an den Klimawandel)

3) 80 Jahre Vogelschutzwarte (Standortbestimmung des Vogelschutzes)

4) Eiszeitliches Wildgehege (Naturnahe Beweidung im Ballungsraum)

5) Rotwildkaelbergewichte (Indilator fuer sekundaere Urwaldentwicklung)

 

1-1,2)はNRW州、ライン川沿地域に多く見られる採掘跡地の人工湖について、

2)は気候変動・地球温暖化下にある湿性林の適応状況、

3)はNRW州鳥類保護連盟80周年(鳥類保護のあるべき姿)、

4)は氷河期時代のネアンデルタール博物館野生保護区

  (都市近郊地域における自然に近い状況下での野生動物)

5)はアカシカの子供の体重(今日的野生保護区の指標)について、です。

各報告の内容を少しダイジェストしてみます。ご興味のある人は報告者のアドレスへアプローチして問い合わせお願いします。

 

1-1)NRW州における人工湖の現状:

    問い合わせ先:Dr. Paulin Hardenbicker  他;paulin.hardenbicer@lanuv.nrw.de

1-2)  人工湖の岸辺構造と評価(水質変化の結果):

   問い合わせ先: Dr. Dietmar Mehl);postmaster@institut-biota.de

 この2つの報告はNRW州のドイツライン川沿い地域に多い褐炭採掘跡地の湖沼(人工湖)について行ったものです。いずれも2027年までに欧州水質基本指針(EG-Wassserrahmen-richtlinie)に基づき生態的ポテンシャルを良くすることが義務付けられています。1-1では2009年から4期に分けて行われて来ているモニタリング(水質調査;50ha以上の湖で義務付けられている)の結果の報告です。NRW州内には2.000カ所におよぶ人工湖砂・砂利、褐炭採掘跡地の人工湖)があり、内50ha以上の規模のものは24カ所あります。3回のモニタリング(初回/2009-2011、2回目/2012-2014, 3回目/2015-2017)の結果から、やや水質は悪化しているようです。検討事項として水辺の構造、急斜面水際(切り立った崖のような岸辺)急斜面水際の浅水域化、活発な水辺レクリエション、富栄養化が挙げられています。掘り取ったままの水辺をどの様に変更し自然を復元・修景するとよいか述べています。

1-2では生態的対応に基づいての生物学的浄化を進める事、そのために水深にヴァリエーションを持たせる、土壌構造、土量に変化をつける、水辺のゾーンに変化をつける、としています。湖沼の水際を平面的にも縦横断面的にも違いを持たせ多様な構造にすることを提唱しています。水質改善には10項目、利活用のためにも10項目の指針を提言しています。 

● 私はエッセン市にあるルール地域開発協議会(Regionalverband Ruhr)で2019年まで景観計画部長として働いていた友人を持っています。彼の案内で数度、近年では2015年にこの採掘跡地を見学しました。また、彼の案内でデュッセルドルフ市の公園部を訪れた時には市の郊外の砂利採掘跡地での自然再生・復元事例を見ました。もう10数年も前の話です。

褐炭採掘跡地の農村移転計画に伴う景観保全、自然復元については1960年頃、日本造園界の先駆者北村徳太郎先生や横山光雄先生、井手久登先生により早くから取り上げられていました。八郎潟干拓地の農村計画で造園学サイドからの調査研究がなされています。自然保護や生態系保全・再生に関する緑地学的研究は佐藤昌先生も指摘されおり、今に始まったわけではなく造園学や景観保全では、既に長い歴史があることを知っておいてほしいです。

 2)は2018-19年の異常乾燥年をドイツは体験し、その時危機に瀕した湿性林(湿性ミズナラ・トネリコー湿性ブナ林)が問題化し対応が求められました。ミュンスター市南にある湿性林で「気候変動温暖化下での自然適応プログラム」が進められています。このプログラムはミュンスター・ヴィルヘルム大学景観生態研究室が共同で進めています。この研究は、2014-2018年連邦農水省(BMEL)と連邦環境省(BMU)、NRW州環境省、NABUの森林気象基金の支援を得ています。湿性林はEUの鳥類保護地区、動植物種と生息環境保護地区を含めた2,226haで、大半が湿性ミズナラ・トネリコーブナ湿性林です。プロジェクト域は4000haの森林、既に100年来利用されず40年以上施業されていない自然状態の森林で、その大部分は私有林です。この森林内には多くの希少な野鳥が多く、同時にコウモリ類、倒木依存の昆虫類、両生類も生息しています。この森林内で3つのタイプの排水路(5ha以下、5ha以上の集水域、管理道路のある水路)で水利、水位調査(2013-2019)が行われ、同時に炭酸ガス貯留(322t/ha;その50%は 土壌、40%は他のバイオマス)を報告しています。

        問い合わせ先:Dr.Britta Linnemann  b.linnemann@nabu-station de

 ● わが国でも湿地の自然保護的観点や文化的景観の視点から地区の重要性が指摘されてきています。全国レベル、地方レベルでの重要性から、このような息の長い調査研究が求められます。日大造園研では渡良瀬遊水地周辺などで同様の研究をしてきています。

 3)はNRW州鳥類保護連盟80周年記念会議(2019)の内容です。連邦自然保護大臣(Praesidentin des Bundesamtes fuer Naturschutz)Dr,Beate JesselがEU鳥類保護指針、生物多様性の点から農業との軋轢、調整の重要性を指摘、バイエルン州鳥類保護連盟会長が絶滅危惧種、希少種の保護の重要性を緑地(農村から都市内まで)保全から指摘、さらにNRW州鳥類保護連盟Herkenrath氏が、州面積の4.9%,(28カ所の野鳥保護区)の状況を報告しています。問い合わせ先:Peter Herkenrath    peter.herkenrath@lanuv.nrw.de

 4)はメットマン郡にある23haの氷河期野生保護区ネアンデルタール博物館から報告です。都市近郊居住者、来訪者の近郊レクリエーションと環境保護、自然保護との取り組みです。1938年発足のネアンデルタール博物館保護区での活動状況、動植物の状況、近郊レクリエーション来訪者の利用状況などについて報告しています。規模は小さいですが自然保護から自然環境教育、利活用まで重要な役割を有していると報告しています。

       問い合わせ先:Hanna Walter   hanna.walter@kreis-mettmann.de 

  5)は現在の極相林(sekundaeren Urwald)の推進は科学的な意味で自然保護の目的であり、自然復元への指針となるとして、野生動物(アカシカ)のモニタリングの結果を報告しています。  問い合わせ先: Dr. Andreas Neitzke   andreas.neitzke@lanuv.nrw.de