水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

散歩道の風情・昨日今日

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 梅雨に入りましたが、例によってコロナの波が依然として高く、なかなか自由な振る舞いには至りませんね。三蜜の無い時間を求めて、多くの人達が工夫して生活しています。

 私も天気の良い日、梅雨空ですが雨の心配のない日の朝は、体のために散歩をしています(既報のブログにある通り)。

 気が向くと気分転換のために従来のコースを変えて別の地域へ足を延ばします。今回も隣の市の緑・里山の風景を求めて歩いてみました。そこは横浜市、東京都町田市、それに川崎市麻生区が接する「寺家ふるさと村」です。横浜市が市域から里山の風景が消失していく状況を食い止め、市民の憩いの空間として「都市内農業保全地区」をふるさとの景・里山として保全しています。居住地近くに残された水田、畑、雑木林、水路、溜池、過湿地など多様な二次的自然を残した近郊の里の緑です。

 多摩丘陵地の南の先端部にあたり、入り組んだ谷戸景観が残っています。広い水田の一次谷戸、それに続くやや狭くなった水田のある二次谷戸、それを包むように雑木林が迫っています(写真参照)。

 以前は農家の人が積極的に水田耕作をし、農の風景を維持してきましたが農家の高齢化や住宅地開発が進んで、この風景の維持もなかなか大変になって来ています。作付け放棄や二次林林床管理が難しくなってきています。したがって公共の手で地域指定を行い、農の景観保全・ふるさと景観の保全のため地域を緑地保全地区とし、乱開発から伝統的二次自然の景観を保全しています。

 まだ、土地所有者の農家が自力で農の景観(水田耕作)維持ができる部分(添付写真上左)はそれとして、できない部分(添付写真上右)はNPO法人や団体が借り受け耕作し(従来の水田景観維持)を継続維持しています。

 

 造園学研究室では、これまでにここを舞台に市民の利用実態を調査する実習をしたことがあります。4日間にわたり、来訪者への聞き取りアンケートや行動実態を調査しました。誰が何時、誰と何を求めてどのように、ここを利用しているか知って、近郊の農の景観保全の意義、利用実態を知ろう、とした調査でした(1997.4.26~ 5.5で4日間実施)。学生諸君にはなかなか大変でしたが意義のある面白い実習でした。

 

 そんな地域の梅雨中、夏至の朝の風景。早苗の間に水が入って周りの林を映しています。静かな朝、三々五々散歩やジョギングをする人、犬を連れて運動させる人、水回りを点検する農家の人など、日常生活に密着した風景です。

 この地も、時が経過して稲が生長し、暑い夏を超えて秋を迎えるころには下段のような風景に変わります。田植えから稲刈りまで、里の風景を作り出し、育て実らせ移り変

わりを教えてくれます。ここの地形や周辺の雑木林の風景は何百年も変わってきていないでしょう。