水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

五島美術館における展覧会と茶道

 今回鑑賞した展覧会・特別展は「東西数寄者の審美眼」と銘打たれ、日本の東西の鉄道王と言われる五島慶太小林一三が蒐集した(絵画から茶道具まで)100点に及ぶ品を展示していました。言わずと知れた五島慶太東急電鉄小林一三阪急電鉄や宝塚の生みの親、その生涯で二人は茶道を通じ、五島は古径楼、小林は逸翁の号を持ち親交を深めたとあります。現在も二人の収集品は、それぞれ五島美術館東京;世田谷上野毛)、逸翁美術館大阪府池田市)で東西に分かれ展示公開されています。

 五島美術館は、かの有名な建築家・吉田五十八が設計、1960年に開館しています。この美術館は五島慶太が蒐集した、国宝「源氏物語絵巻」ほか5000点余の収蔵品を所蔵していることで有名です(関連・参考;益田孝、高梨仁三郎コレクション)。

 美術館の敷地は5000坪(1.65ha)にも及び、造園家にとって垂涎の的、南に開け富士山が眺められ、眼下に水面が輝く多摩川の清流を望む、国分寺崖線上に位置しています。緑豊かで眺望に優れ、以前は湧水にも恵まれた山紫水明に優れた場所。残念ながら今、湧水は見られないようですが、眺望や四季の緑の変化、静けさは得られます。 

 秋の紅葉が見事な中で展覧会を堪能しました。

 

 この展覧会では、絵画・書、陶芸、漆芸、茶会に区分され100点におよぶ展示物がありました。その中でも、特に目を引いたものは以下の通りです(逸;小林一三、五;五島慶太の収集品 太字は重要文化財)。

絵画

三十六歌仙藤原高光、逸)、(三十六歌仙清原元輔 五)、大江山絵詞 逸、豊臣秀吉像(狩野光信筆)逸、 紅葉流水図(尾形光琳大胆な構図と配色)五、

嵐山春暁図(円山応挙)逸、奥の細道画巻(与謝蕪村)逸、檜蝉図(谷文晁)逸、

陶芸

井戸茶碗(美濃)五、鼠志野茶碗(峯紅葉)五、 黒茶碗 七里(本阿弥光悦)五、

色絵竜田川文向付(尾形乾山作)五、 色絵菊文向付(尾形乾山作)逸、

茶杓千利休作)五、

 茶道に造詣の深い古径楼と逸翁。二人の書簡も含め収集品の素晴らしさに感嘆し、またそれを具体的に生活の中で表現し、茶会が開かれた時代、社会、環境(庭園も含め)を同時に鑑賞、知ることができたことは大きな喜びでした。庭園を散策しながら大都市近郊に私鉄の網を整備した先見性、それと同時に茶道を極め親交を深めた両雄の功績は、今もその輝きを失っていないことには驚きを隠せません。

 自分の心の中に大きな空洞ができ、空しさや寂しさが漂う中、静かに庭園内の自然を味わい、その空間的拡がりと茶道を通じての世界観、時代の先見性などを知るところとなり、大きな癒しの時間を持つことが出来たことに満足しました。