水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

写生と自然(動植物)、芸術と空間 2

 円山応挙展が行われた美術館は、東京・表参道にある根津美術館である。この美術館を設計したのは、今年話題になった2020年東京オリンピック新国立競技場の設計をも担当する隈研吾東京大学教授である。初めて隈の作品を見たのは、栃木県那珂川町馬頭にある馬頭広重美術館である。日大の大澤先生とともに那珂川町馬頭を研究対象地とした折に訪れ、竹を生かした和風の美術館で場所の雰囲気、景観に合った建物であった。

建築家・隈研吾は2000年(平成12年)にこの美術館の作品で「村野藤吾賞」を受賞している。

 根津美術館も、みゆき通りの正面に位置し、美術館通りに並行してキンメイチクの植え込みに見え隠れして建物が見える。美術館正面玄関へのアプローチは、京都銀閣寺のL字の園路に似て美しい。背後に日本庭園を控え館内からその庭園の眺めを生かした明るいロビー空間が広がる。起伏のある庭園側からは館の建物が邪魔にならず景に溶け込んで庭と一体化して落ち着いた佇まいを作っている。この美術館の設計で2009年(平成21)毎日芸術賞を受賞した。

 そんな美術館での「円山応挙展・写生を超えて」であった。

建築家・隈研吾は読売新聞;ふるさとにエール(上):11月18日付で次のように述べている。少し長いが引用する。

「人間は罪人だからこそ死んでいくんだということを教わった。実は仏教の考えも同じところから始まっていると僕は思う。自分は生かされている、罪人だという意識が、他人への愛情や感謝につながっていく」 「だから、基本的に自分は罪人だという意識で生きているんだけど、中でも建築というのは重い罪だと僕は思っているわけです。だってある場所を占拠し、いろんな自然素材を消費すれば、環境にも悪い影響を与えてしまう。でもそういう罪を受け入れ、償うつもりで建築を手掛ける人が世の中に必要だとも思っていて、誰かがその責任を負わなくてはいけないなら、自分が負ってみようかなと思っています」

 この文章を読んで、「自然や緑・生き物を対象とする芸術=庭園、造園」はおよそそれに対峙する位置にあるのではないかと感じた。つまり、造園は、自然素材を消費の対象とは考えていない(真逆に生かし生かされて作品化する)し、環境に悪い影響を与えるどころか、環境を的確にとらえ理解しそれを生かして美しさと同時に機能性を理解して作品化してきた」のが庭であり園・苑であり空間である、と考えている。

 円山応挙の作品に「七難七福図巻」があり、人間を取り巻くどこの世界にも、常に七難七福が存在し、人間はそれに恐れおののき一喜一憂し生きながらえてきており、悲喜交々、何かに縋って頼って祈って生を全うして来ている。人の人生に今も昔も変わりが無い。

 

 

 追)三井寺円満院祐常門主、豪商三井家、東武創業者、根津喜一郎、