甲賀町(コウカチョウ)にある櫟野寺(ラクヤジ)は792年、比叡山延暦寺を建立した最澄が創建した寺と伝えられており、この秋、「平安の秘仏・櫟野寺の大観音とみほとけたち」として公開されている。この展覧会を東京国立博物館、櫟野寺と共に主催している読売新聞の10月28日夕刊に載った解説を読んで見たい衝動に駆られた。郷里の岐阜に近い滋賀県、以前毎年正月、多賀町の多賀神社に初詣の折、焼物の町信楽を訪れた懐かしさがあったからかもしれない。
仕事上、、これまでにも京都・奈良地域の史跡名勝、社寺庭園を訪ねることが多く、折々に寺院の仏像を拝観してきた。仏像の前で彫像と対峙し沈思黙考する時間的余裕が持てるようになり、同時に日本の歴史や文化、芸術について勉強しなおそうと思うようになった。今回の秘仏の展覧会はまたとない良い機会であり内容である。秘仏は全部で20体、その中心は11面観音菩薩坐像である。
中心に置かれた11面観音菩薩坐像は光背、台座を含め5mを越え黄金に輝き見る人を圧倒する。しかも像は1本の櫟の大木を刻んで造られており、寺院では本殿の奥に安置され、離れて前面からしか拝むことはできない(次の御開帳は平成30年秋)が、今回の展覧会では周り四方から観音菩薩をつぶさに見ることが出来る。坐像全体の美しさ、均整の取れた菩薩の姿を鑑賞することができる。仏像では一般的に立像(一丈六尺;丈六仏=4.8m)、坐像は半分の2.4mとされるが、この観音菩薩坐像は例外なく大きく、眼前に身を置くと我が身が小さく感じられ、その前に膝まづき無心で拝みたい気持ちになる。言葉無く呆然とし感激に浸るだけであった。
櫟野寺本堂での秘仏(11面観音菩薩坐像)の御開帳は平成30年秋、33年に一度の大開帳を迎えるとされている。それまでこの菩薩坐像は見られないのである。それを目標に慎ましく生活したい。