水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

庭園博覧会(都市緑化フェア)に関連して

 先日、ドイツの庭園博に類似した都市緑化フェア2017・横浜が終了した。毎年恒例で日本のどこかの都市で都市緑化、花と庭と公園を主題にしてフェアが開催されてきている。都市公園を中心に、花と緑を都市の街中に広げ、新しい緑の役割を市民に理解してもらいながら都市の緑の充実を図るよう進められてきた。私も以前からドイツの庭園博を紹介しながら、日本での都市公園や緑地の増強を期待し、そのあり方を見てきた。ドイツの庭園博(国際レベル、連邦レベル、州レベル)も財政的な問題やそのあり方の意義について、今日、いずれの場合も課題を持っているものの、計画的かつ着実に都市内の公園や緑地の整備拡充に寄与してきていることは火を見るより明らかである。

 緑化フェア2017横浜では既存の公園緑地を含め、新たに都市開発整備で生まれた地区(例えばグランモール地区)も取り込み実施されたことは意義あることである。とりわけ新たに里山地区を設定し、横浜ズーラシア(動物園)と一体的に植物園を想定し新たな緑地を生み出すこととなった点は大きく評価されて良いと思う。これまでのフェアでは少なかった緑地や公園の発展的新規拡大、増強整備が今回は進んだと言える。

 以下にドイツの最新の庭園博事情について、公園緑地に関する専門誌に示された報告を概説し、同様の問題、課題を持つ我が国の公園緑地整備に何らかの示唆を得ることが出来るのではないかと考えた。対象となった専門誌は、これまでにもここで概説してきた”Stadt  +Grün”の2017年4月号である。

4月号

Pückler.Babelsberg –Der grüne Furst und die Kaiserin 

 Michael Rohde P.13-20

 この論文の筆者は;Michael Rohde教授、プロイセン城郭・庭園財団会長;SPSG(ベルリンーブランデンブルク);Stiftung Preussische Schlosser und Garten(SPSG)  m.rohde@spsg.de 

Katrin Schroder、庭園史跡、SPSGの庭園課 k.schroeder@spsg.de

 1843年プロイセンのウイルヘルム、アウグスタ皇帝夫妻、10年掛けて造られた庭バベルスベルクの公園が造られた。P.J.レンネは3つの展望地点(ハフェル河から20mの高さ)を造っている(ヴィクトリア、レンネ、フュルステン)。この催しに先立って、2015年ボンにある連邦文化会館で造園家:Fursten Pucklerのムスクワ展が行われた。1785年ラウジッツ(Lausitz)のムスクワ城で生まれる。ナポレオンとの戦争(1806:プロイセン、ザクセン)1812、1813、1806-1810(Puckler20歳台の頃)イタリア、フランス、南ドイツへ旅をしている。 ほか、Babelsberg城の修復、復元についてPuckler の所業と歴史、現状について解説

 Pucklerは南ドイツへの旅の折、ミュンヘンでニーフェンブルク城やイギリス庭園(Friedlich Ludwig von Sckells)を見る。1810年ゲーテと知り合う。1811年父の死語ムスカウの私邸の風景式庭園計画造る。

造園家としてのFursten Pucklerについて解説

ベルリン・ブランデンブルク(ポッツダム)のバーベルスベルクにおいて2017.4.29~10.15まで行われている連邦庭園博会場での催し物「ピュックラーの造った、バーベルスベルク・公園と城」展について。

 

Highlights der internationalen Gartenausstellung 2017 in Berlin

Sibylle Esser    esser@bundesgartenschau.de

IGAベルリン会場(世界の庭園部分)の花展示に関する解説。 Blumberger Damm入口部分に造られた屋上緑化。ZinCo-Systemを採用。Fairplants-system会社設計・施工(2016夏)の植栽。都市内に於けるいろいろな緑(樹木から草・地被植物まで使った)の作り方の展示。(個人の庭だけで無く、共同、共有の中庭、広場の緑化、緑のスペースづくり等)バラ園(2000年以降に造られた品種)、ダリア園  2000㎡の温室(高さ12m)での熱帯植物などについて解説。

Experimentelles Grun in internationalen Gartenkabinetten   p.21-26 

国際庭園博2017ベルリンの施設紹介、同庭園博ベルリンについての記事は3月号にもある。

 庭園博馴染みのアザレア、ツツジ類(白花のみ)を使ったコーナー(1400㎡)、色とりどりのツツジ類の部分、植栽デザインの面白さ(波をデザインした植栽;700㎡)  。 環境に優しい自然素材の基盤における各種の植物を利用した緑化法。イギリス風庭園(6000㎡)の植栽と広場(5000人収容可)の植栽。 IGABerlinの会場(世界の庭園部分)における屋上緑化始め、世界の庭・会場の植栽について解説。会期中を通しての各種コーナーの構成とその設計意図、植物の使い方等。

 

Klarheit und Magie – die LGS in Bad Lippspringe     

  Vera Hertlein-Rieder: Sinai設計事務所の造園家 public@sinai.de 

 2017年の州庭園博会場、33haの森林を会場としたBad Lippspringeの解説、都市内と郊外の森を結ぶ緑の軸線、近郊レクリエーション利用に使う。 

 すでに19世紀から胸・肺の病気の療養地として有名で、その保養地としてKaiser-Kals公園とその周辺の森は使われてきている。ベルリンの設計事務所Sinaiが競技設計コンペで選ばれて設計、20世紀の初めに保養地として指定を受ける。すでに保養樹林(Kurwald,)に色々な療養施設(テルメ他、寝ころび広場、プール、各種病院など)1832年アルミニュームを含む泉、1000mに及ぶ軸線となる園路、シダ植物が繁茂する古い樹相など、部分的に第二次大戦後、外来樹木により植林された部分或る。4000㎡の2つの池は自然系の水路で結ばれている。

  

Der Paulinenpark in Apolda –zur Landesgartenschau saniert

     Dip-LA Michael Dane  mail@dane-la.de

 PaulinenparkはApolda市での州庭園博会場の一部、市中心部の北端にあり3ha 。

1850-1930年の泡沫社会(ドイツのバブル時代)の工場地帯(繊維会社Pauline Brandesで1924年まで住居)にあった庭(Villengarten)を中心とした町。多種多様な庭、壁、石庭、花壇などなど、2014年末、検討案件がHannoverの事務所(Lohaus und Carl)に持ち込まれ設計された。都市再開発と緑地整備、それが庭園博の主要テーマである。        

 

Industriestandorte und Villengarten als grosszugige Parkanlage

Landesgartenschau Apolda – Herressener Promenade    

  Marcel Adam          Dip-Ing. Marcel Adam   info@adam-la.de

ApoldaはThuringen州4番目の州庭園博都市。24.000人が都市中心部に居住する繊維系工業都市。都市改造を余儀なくされて来ており、働き場所創出、都市再生・改造を目標に庭園博が行われている。Apolda市の庭園博のコンセプトは歴史的遺産(昔の歴史文化財的建物、構造物などの保全と工場跡地再開発)、旧市街地の景観保全と駅前通を結ぶ居住地再開発、19世紀の終わりに市美化協会の手でプロムナードと公園が整備され、20世紀の初め頃に作り直され中心部に池が設けられた。その後南部分にも池が造られ、それらを結ぶ緑地の整備(公園の外縁部の緑地計画の充実)を目標とした。庭園博会場の整備に当たって池縁辺部の自然再生化(コンクリート護岸の撤去など)、工場跡地土壌の改良など問題点を改善しながら開催に至っている。Apolda市の将来計画にこの緑地が市の緑の骨格として重要である。 

 

Anschub fur neue stadtebauliche und freiraumplanerische Ziel

Gartenschau Bad Herrenalb 2017                                Ulrike Bohm

シュバルツバルト地方のBad-Herrnalbにおける2017年の州庭園博会場。田園地区と保養地区の町として存在。州庭園博を契機に都心部を改造。Alb川の流れを挟んで景観が牧野と樹林地、都市の背後を山間部Schwalzwaldが控えている。 

Prof.Ulrike Boehm  bbzl bohm benfer zahiri landschaften stadtebau. mail@bbzl.de

コンペのテーマは緑地の保全、市街地に点在する施設の系統化、緑地で結ぶ緑地帯とこれまでの土地利用を生かした、町の姿を活かした緑を豊かにする契機とし、都市内改造に取り組んでいる。

 

Kurpark, kurpromnade und Rathausplatz

Pfaffenhofen an die Ilm                                        Barbare Hutter

Ilm川に沿った人口24.000人の町Pfaffenhofen(Kreis レベルの中心都市)での州庭園博と町造りの報告。この町は中部バイエルン州(Munchen, Ingolstadt,Augsburg市の間に位置)の(Goldmedal by international Awards for Liveable Communities)最も将来性があり活力のある都市(die lebenswertese Stadt der Welt)として表彰されている。2012年競技設計“小さな庭園博2017”での提案。名もない都市河川Ilm (緑のない過密住居、見所のない古い町、工場、護岸河川、遊歩道のない川)の街を庭園博契機に改善。 Ill河を中心として都市内の緑地整備、河川河畔の自然化(450m)と緑地整備、遊戯広場の整備を実施。ドナウ・イザール河台地(Hugelland)に位置し、イルム低地と言われる地域である。

    

Von Industriebrachen zu “Schönheit und Produltivitat”   Dr. A. Budinger

 2027年の国際庭園博をルール地方で行う。石炭と鉄鋼の工業地帯、「将来、この地域でどの様に生活すべきか」という課題の下で、IBAエムシャーパーク(1989-1999実施)とルール文化中心都市(Kulturhauptstadt Ruhr 2010)のモットーで都市改造・再生事業、同博覧会を実施してきた。ルール地方には500万人の居住者。将来像がまだ決まっていない。これまでの地域整備、都市整備でRVR(ルール開発協議会)の果たしてきた役割は極めて大きい。2027年の国際庭園博開催を既に15年前から計画し、地域整備、都市整備の目玉にしようとしている。ルール地方の緑地整備では既にしっかりした南北軸の緑地地域(緑地帯)を決め、それに沿って連邦庭園博、IBA, KHR2010が進められてきている。さらに、地域整備・発展を狙い 一大イベントを計画する意味、効果などについて解説している。

  W.Gaida   H. Fischer bundiger@rvr-online.de galda@rvr-online.de