水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

東海道五十三次  今・昔  その十

駿河の国(静岡県)は東西に長い国です。前回、箱根峠を越え駿河国に入ってから府中(静岡市)まで9宿を(3泊4日)歩き一旦自宅に戻りました。体調を整えて今回は府中から掛川までの8宿(府中、鞠子、岡部、藤枝、島田、金谷、日坂、掛川)を2泊3日で歩く計画にしました。1か月ぶりの東海道上洛の道です。

 一日に歩く距離は年齢と体力を考え凡そ20km前後で計画し、また季節的に蒸し暑くなる梅雨の時期でもあるため、早朝の旅立ちを旨としました。府中からの出立時間を早く設定したため自宅を6時に出て小田急線で小田原まで行き、小田原から新幹線で静岡に入りました。新幹線こだま号は空いているだろうと高を括っていましたら、なんと予想に反して地域間の通勤で新幹線を利用する人が多い~多い。小田原から熱海、三島、新富士、静岡間自由席はほぼ満席状態でした。今の世だから可能な行動(小田原6:54着、7:08発こだま631、静岡7:54着=1時間)で前回の終点、静岡駅前伝馬町交差点に朝8時に立ち、歩きを開始しました。

 静岡は昔、国府がおかれたところから府中と呼ばれますが、「府中」は「不忠」に通じるとされ、町の西の聳える賊機山から「静岡」と改められたようです。安藤広重東海道「府中;安倍川」の絵は賊機山を背景とした安倍川の川越しの風景。徳川家康駿府城を築き1605年将軍職を秀忠に譲ってこの町で過ごしています。城下町の香りは町の名前や碁盤目の町割りに見られ、西は安倍川が境となっています。街中をジグザグに進み西に進路を取って安倍川橋を渡りました。橋は1923(大正12)年完成のアーチ型とトラス型を組み合わせた鋼橋で3代目とあり、最初に橋が架けられたのは1874(明治7)年、二代目は1903(明治36)年、いずれにしても江戸時代の東海道は安倍川も川越人足(川越町名がある)の役割が重要なところだったようです。静岡側の橋の袂には安倍川餅で有名な菓子屋;石部屋(1804年創業)があり、その今も昔も大勢の人の人気の的です。

 安倍川を渡ると直ぐに鞠子宿に懸かります。鞠子は小さいながらも安倍川の川越しで賑わった宿、京口の町はずれにはこれも広重の絵(弥次郎兵衛・喜多八が店先の縁台でとろろ汁を食べる景)で有名な「丁子屋」が往時の雰囲気そのままに品のある佇まいを見せています。ここには芭蕉をはじめ有名人の歌碑が並んでいました。

  芭蕉の句 「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」(店の外観は、今・昔 12  添付写真 A

 宿場を出て丸子川に沿って進むと赤目ヶ谷地区に入ります。ここは日本の紅茶発祥の地とのこと、両側に迫る山裾で紅茶が栽培されていたようですし、長源寺には中国、インドに渡り紅茶を研究し茶の木を持ち帰った多田元吉の墓があります。茶と言えば禅宗との関係で僧栄西を思い浮かべますが、ここでもまた別の偉人を知ることが出来ました。国道1号に出て狭い谷間の空間を進むと山が迫り国道はトンネルに入ってしまいます。旧東海道はどこにあるかと探しますが見えません。トンネルに近づくと、ありました!本当に小さな狭い道が川に沿って沢筋に残っていました。これが世にいう国の史跡に指定された「宇津ノ谷峠」でした。

 じつは、ここ「宇津ノ谷峠」で旧東海道を少し見失ってしまいました。途中まで(お羽織屋前の石段)は正しかったのですが、登り切った先で別の道に入ってしまいました(宇津ノ谷隧道:1926-1930建設;現在県道208号)。肝心の峠越えを体験できず昭和のトンネルを通って藤枝市側に出ました。この「宇津ノ谷峠」は2010年(平成22年)2月22日に国の史跡に指定されています。峠を越えて辿りついたのは岡部宿です。岡部宿は岡部川に沿っており、街道の北東端でL字に曲がり藤枝方面に伸びる細長い街道宿です。1000mほどの小さな宿ですが宇津ノ谷峠、安倍川、大井川の川止めで人が溢れた時は、この宿も旅人が溢れたようです。一番大きな旅籠・柏屋(1836建築)は現在藤枝市の史跡に指定され、建物は1998年(平成10年)登録有形文化財になっています。旅籠の内部を詳細に見ることが出来、しかも多くの史料で江戸時代の様子もよく分かります。

大旅籠・柏屋の外観は、今・昔 12  添付写真 B

 街道沿いの藤枝宿商店街も、他の市町の旧道商店街と同じくシャッターの閉まった店が多く見られ(週日日中だから?)街づくりの難しさが感じ取れました。しかし市の中には活性化の生まれている部分もあり、これからの動きに期待したいものです。

駿河国の最西の市、島田宿を目前に第一日の歩きを終え、藤枝宿になりました。宿泊は藤枝パークサイドホテル、大変居心地良いホテル、設備やアメニティーが充実し、朝食が豪華、それでいて安価、藤枝で泊まるならこのホテルをお勧めします。

この日歩いた距離;22.8km, 41,874歩でした。お疲れ様でした。