水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

展覧会巡り  2

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 展覧会巡り 1では、室町時代から江戸初期までの水墨画、その時代の2大巨匠雪舟(1492-1506)と等伯(1539-1610)を見てきた。展覧会巡り 2では、偶然、本当に偶然で、ほぼ同じ時代、イタリアのルネッサンス期を代表する2大巨匠の素描展を見ることが出来た。2大巨匠とは、画家レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)と彫刻家ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)である。

 ダヴィンチの作品でとりわけ有名な絵画は、「モナリザ」(1593-1507)と「最後の晩餐」(1498)、ミケランジェロの作品では彫像の「ダビデ像」(1504)と巨大な「システィーナ礼拝堂天井画」(1508-1512)であるが今回の展覧会は、芸術家にとって作品制作の最も基本となる「素描」69点であった。

 多くの素描は赤チョーク、黒チョーク、インクとペンで描かれており、敢て言うならば色の無い(少ない)作品である。物の形(例えば人体の筋肉、その部分と動き)や顔の表情を単純な線だけで表したものである。

 水墨画が墨と筆を自在に使って風景や物を描き出し、濃淡で深みや広さを作り出し描かれていない空間(余白)で空間の広がりを表現しているのと似て、素描ではチョーク(特に赤チョーク)やインクを用いて人の肉体や人物の表情(部分や全体)を(点と線で面を表現)詳細かつ単純に捉え描き出している。

 ダヴィンチの「少女の頭部/岩窟の聖母の天使のための習作」(1483-1485:添付写真)とミケランジェロの「レダと白鳥/の頭部のための習作」(1530)を同時に見比べることが出来た。作品としては大きくない。前者は18×16cm、後者は35×27cmである。ダヴィンチの素描でもう一つ有名な赤チョークで紙に描かれた自画像(1515-1517)でも33×21cm、A4の大きさである。

 二人の巨匠の素描を見て、共に「万能人」と言われ絵画や彫刻だけでなく建築、科学(土木工学、流体力学、光学)、解剖学まで関心を広げたダヴィンチと絵画、建築、詩作ほかに作品を残したミケランジェロ。 15世紀、イタリア、ルネッサンスの最盛期に活躍した芸術家(万能の人)の素描作品はいろいろ考えさせてくれた。

 そのころのイタリアはルネッサンス期、メディチ家(ロレンツオ・デ・メディチ)が支配する

フィレンツェ共和国(郊外の高台に別荘を建て露段式庭園を整備した時代)ではメディチ家が多くの芸術家を庇護して作品を生み出させてきている。強力なパトロンの支えによって芸術はじめ科学が急速に発展していった時代である。宗教はじめいろいろな文化や産品が世界的な広がりと共に拡大したのもこの時代である。日本では展覧会1で鑑賞した室町~安土桃山時代水墨画家の時代である。

 

 この展覧会の会場は東京丸の内、旧三菱一号館である。1894年、三菱の建築顧問であったイギリス人建築家ジョサイヤ・コンドルの設計とある。1968年に解体されたが2009年復元されている。煉瓦造りの建物の中庭は、緑に包まれたパティオ風となっており、街路樹を中心とした緑で整備された中央通りと合わせ丸の内オフィス街の中心となっている。

 この素描展は9月24日まで行われている。