水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

展覧会巡り  19   LOUVRE

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アントワーヌ=ジャン・グロ;1771-1835  アルコレ橋のボナパルト1796・11・17)  

ヴェロネーゼ;パオロ・カリアーリ;1528-1588  女性の肖像(美しきナーニ)右 

 

    東京乃木坂、と言っても土地勘の無い人には分かり難い場所です。青山墓地の近くでも分かりずらいですかね。日本学術会議のある場所、と言っても余計に分からないでしょうか。この地に国立新美術館が出来たのは2007年1月、設計は黒川紀章、緩やかな曲線を主体としたデザイン、建物内部の南側1階は休憩、集合スペースで吹き抜け構造、高さと大きさがよく分かります。

 今回の「ルーブル美術館展」は3か月にも及ぶ展覧会(5/30~9/3)、世界的に有名なパリのルーブル美術館所蔵の「肖像」に光を当てた展覧会でした。会期末もあって多くの人が詰めかけ鑑賞していましたが、その多くは女性でした。

 展覧会は、ルーブルの顔。「肖像芸術」「人は人をどう表現してきたか」がテーマになっています。112個の作品(美術館の8部門;古代オリエント美術、古代エジプト美術、古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術、絵画、素描・版画、彫刻、美術工芸品、イスラム美術)が5つのテーマ(プロローグ;マスク--肖像の起源、第1章;記憶のための肖像、第2章;権力の顔、第3章;コードとモード、エピローグ;肖像の遊びと変容)に分けられ展示されていました。

 

 作品の中で魅せられたものは、やはり絵画と彫刻の肖像でした。中世以降の王侯貴族の肖像は一般的に知られていない画家によるものが少なくありませんが、象徴性と具体性から精巧・緻密で華麗に描かれた姿は素晴らしいの一言です。少し前にフランス映画「ルイ14世の死」(ブログNo.134)を見ていたこともあり展覧会の肖像でもルイ14世の肖像画、彫刻には親近感がありました。とりわけ「5歳のルイ14世;1643年頃、J・サラザン作、真鍮」は精巧で可愛らしい王子の像(頭部)がとても印象的で素晴らしく見事でした。

 王妃マリーアントワネットの胸像(1782年、セーヴル王立磁器製作所のビスキュイ;素焼きの硬質磁器、ルイ・ポワゾ作)も素晴らしい繊細で細やかな磁器像。マリーアントワネットの気高く気品ある美しさを見事に表現していて感激。像の周りを何度も巡り、美しさ緻密さとその精巧さに絶句するのみ。

 

 肖像絵画では、ナポレオン・ボナパルト添付写真上左参照)をはじめ、侯・伯爵夫人たちの作品に素晴らしいものがありました。E・ブラン(1755-1842)のスカボロンスキー伯爵夫人の肖像画(添付写真下、左の上段右)には見惚れて心和み、その微笑に引き付けられました。今回の展覧会出品作品では秀逸です。それと双璧の  V.カリアーリ(1528-1588)の”美しきナーニ”添付写真上右参照)。銀色で小さい模様が刺繍された蒼いドレス、薄く透けるレースのブーケ。気品ある姿と右下方を虚ろに眺める眼差し、右手を胸に当てる様は見る人の心を引き付け陶酔の境に誘いました。F.ゴヤ(1746-1828)の絵(子犬を連れ立つ男爵の小児像)は色遣いの見事さと男の子のふっくらとした立ち姿が印象的でした(添付写真下、上段左)。

 出品されている絵画には古く16世紀から18-19世紀まで、ルーブル博物館のサロンに出品され蒐集されたものが多く、博物館の歴史の中で王国の芸術に対する見識の高さ、文化を築き上げる姿勢に歴史の偉大さを感ぜざるを得ませんでした。

 ルーブル博物館の歴史を紐解けば国や高貴な有識者、有力者たちの芸術・文化に対する考え方、支援活動(寄付をはじめとして)の伝統が脈々と繋がっていることに感服します。

 

 同じ作品を現地パリ、ルーブル美術館で鑑賞したら、また今回とは全く異なった印象を受けるに違いありません。そんな機会はもう二度と無いような気がします。その意味でこの展覧会は印象深く、時間を共有した人にも感謝したいと思います。

 

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