水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

化石展示と昆虫展示

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 7月14日(土)東京・紀尾井町にある城西大学水田三喜男記念博物館大石化石ギャラリーを訪れました。なぜ急に化石博物館?と問われるかもしれませんが、その伏線はやはり私が生まれた田舎に関係があります。岐阜県揖斐郡池田町、その南に接して金生山があります。昔は岐阜県不破郡赤坂町、今は大垣市赤坂町。現在も石灰岩が産出される山で、かなり昔から石灰工業や大理石工業が発達しています。それに加えていろいろな化石が産出する山として世界的にも有名です。

 石灰岩の中には大理石も含まれ、石灰工業と並び大理石工業も盛んでした。金生山の山容は、その昔、私の子供時代と比較すれば、かなり大きく変わり果てています。子供時代に山を登って北側から金生山の寺社(真言宗明星輪寺;虚空蔵菩薩や金生山神社)に参拝できましたが、今はその山も寺院の南側部分だけを残していますが、周りの山の部分は石灰岩の採掘が進み山肌が大きく抉られ、昔の緑の山容の面影はありません。

 金生山を構成する岩石は白亜紀ジュラ紀石灰岩で、全国的に良く知られた化石の多く出現する山です。いろいろな化石(有名なウミユリ、フズリナなど;山の中腹に化石博物館がある)が見られます。小学校の遠足でその地を訪れ、道端の石に小さく細かなフズリナの化石が含まれていることを知りました。あれから、何十年と経って家族を連れ博物館を訪ねたことがありますが寺院は昔のままでしたが、周りの山の様変わりには驚きました。

 そんなことも関係しているのでしょうか。小学生の孫が化石に興味を持った時、首都近郊で化石を見ることになりました。国立科学博物館もありますが、インターネットで調べたら都内の大学に併設された化石ギャラリーのあることが分かり、早速訪れることにしました。その名は、城西大学水田記念博物館・大石化石ギャラリー紀尾井町キャンパス3号棟地下1階)です。大石道夫東京大学名誉教授および中国遼寧省古生物博物館からの寄託・寄贈を受けた200点におよぶ実物化石標本が保管・展示され研究・教育に供されている様です。

 このギャラリーには、大石コレクションとしてブラジル、レバノンで採集された約1億年前・白亜紀*の魚類化石、アメリカ、ヨーロッパ(主にドイツ)の古生代**の魚類化石を中心に昆虫、植物、甲殻類などの化石が沢山ありました。特にドイツ(シュベービッシェ地方)産の化石は、私が初めてドイツに行った地域(1973-4年;ドイツシュベービッシェ地域ブラウボイレン町のゲーテ・インスティテュートで4ヶ月過ごした)でもあり懐かしい思い出が蘇りました。大変種類も豊富で素晴らしいコレクションを静かな雰囲気の中でじっくり堪能できました(孫より自分が満足し感動しました(後の写真)。

 化石の中に、蟻や蟋蟀など昆虫の化石もありましたが、実物を見ようということになり、丁度この日からオープンした、東京大学総合研究博物館の「珠玉の昆虫標本」と銘打った収蔵品公開展示に足を向けました。

 地下鉄丸ノ内線本郷三丁目駅から歩いて5分、東大本郷キャンパスの最南端、懐徳門から直ぐの所に煉瓦造りの総合研究博物館はありました最初の写真。 

  こちらの展示も素晴らしいの一言です。「好きこそものの上手なれ」の諺通り、時間を掛け世界や国内を駆けまわり集められたそれぞれの昆虫達。江戸時代から現在まで14人(武蔵石寿;1766-1861、佐々木忠次郎;1857-1938、箕作佳吉;1858-1909、加藤正世;1898-1967、山階芳麿;1900-1989、五十嵐邁;1924-2008、江田茂;1930-2008、須田孫七;1931-2018、石川良輔;1931-  、尾本恵市;1933-  、濱正彦;1935-2012、宮野浩二;  白石浩次郎;1941- 、岸田泰則;1949- )がそれぞれに蒐集した昆虫の標本が展示されていました。チョウをはじめ ガ、トンボ、オサムシ、セミ、ハチ、ゴミムシ、果てはアリまでそれぞれの昆虫を雌雄や幼老は当然として、地域個体の違い、採集場所や季節・年の違い等々、その数は膨大に上り、しかもきちっとした展翅、ラベル表示され標本箱に納められいます。案内書には東大博物館の所蔵する秘蔵コレクション50.000点を公開しているとありました。展示方法は、標本箱が壁に沿って縦に足元から天井近くまで隙間なく吊り下げられており、それはそれは筆舌に尽くし難い展示の様相でした(写真参照)。展示の全体風景に驚くばかりで、個々の昆虫の内容の詳細は、身の丈の周り以外は見ることが出来ませんし、細かいものはルーペ無しで見ることは出来ません。実物、本物の色や形の多様さに驚くのは当然ですが、とにかく蒐集家の尋常ならざる意欲と行動の弛まぬ遂行・努力には敬服するほかありません。   展示公開は10/14まで開催・入場無料 

 化石でも昆虫類の存在を知り、実物・本物の標本展でもその多様性を知ることが出来ました。

 何億年前から連綿と続く生物の存在、地球環境の途方もない長い歴史、生き物の存在。そして今、これからの地球の在り方、一個人の自分の存在、どう捉えて、何を考え生きるか、分からないことばかりの行く末を感じる日になりました。

 

 

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    (写真左側;城西大学大石化石ギャラリー   : 写真右側;東大総合研究博物館秘蔵昆虫コレクション)

参考;

* 白亜紀地球の地質時代の一つ。約1.45億年~6.6万年前ジュラ紀に続く時代。石灰岩から成る地層でなる呼び名。温暖で湿潤な気候が続き被子植物が主流、

** 古生代約5.42億万年~約2.51億万年前。デボン紀は魚類が生息。サメも出現、石炭紀には爬虫類が出現。

追記;東大博物館「珠玉の昆虫標本」URL;http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/2018konchu_description.html 紹介記事より。

 日本の昆虫学は東京大学に端を発し、様々な学術分野や研究領域に枝分かれして今日に至ります。この学問の発展には専門機関の研究者だけでなく、むしろ在野の研究者の貢献も大きいところです。 (中略)

 本特別展では、東京大学総合研究博物館に収蔵されている約70万点の昆虫標本のうち、日本の昆虫研究史の源流ともいえる学術標本から現在に至るまで継続的に収集、研究されてきた秘蔵コレクション約50.000点を一挙公開。この中には約200年前の江戸時代に製作された日本最古の昆虫標本、近代養蚕学の父、佐々木忠次郎やミツクリザメで知られる箕作佳吉の明治~大正期の昆虫標本、昭和初期に採集された鳥類学者の侯爵・山階芳麿の昆虫標本、ブータン国王陛下から贈呈されたブータンシボリアゲハ、昆虫学史上に名を連ねる加藤正世、五十嵐邁、石川良輔のコレクショウなどが含まれる。  以下略・・・