水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

報道の自由と国家機密  

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 国家機密は、科学技術の進歩や社会・経済の国際化により複雑になり、地球環境がより狭く国際情勢がより複雑化するにつれ重要となって来ている。支援や援助が民間で行われていても、それに参加する人が属する国にとって関連情報の取り扱いは難しくなる。

 今、国会では以前に日本政府が国連の要請を受けてアフリカに送った自衛隊部隊の現地での在り様を記録した内容が物議を醸しだしている。支援の状況を記録した内容に派遣の条件不適合があるのではないかという疑問である。

 情報の機密性は、その情報が国の針路や施策の是非を左右したりする場合、取り扱いはより重要となる。

 米映画「ペンタゴン・ペーパーズ:最高機密文書」は、かってアメリカ政府がベトナム戦争を巡って情報をどう収集しどう伝えどう流していたか、最高機密に当たる文書を民間新聞社が秘密裏に入手し公表するかどうか、を描いたものである。

 トム・ハンクス、メリル・ストリープが出演し、スティーブン・スピルバーグが監督を務めた映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を見た。大変見ごたえのある内容で、あっという間の2時間であった。最高国家機密と報道の自由、真実を伝えることの重要性、新聞報道機関(マスメディア)と読者(市民)、会社か真実報道か、いろいろな側面の判断材料を交えながら状況が進展し、新聞社社長、記者、ライバル社、政府関係者など「公表」決断への過程が描かれ、新聞発行の最終決断までの緊迫感も盛り込まれた見応えのある作品であった。

 

 映画のパンフレットによれば、4代にわたる歴代大統領が30年間も隠さなければならなかった事実(最高機密文書)ベトナム戦争。1971年泥沼化したベトナム戦争の状況を記した大量の文書が流出して大手新聞社に持ち込まれ、その一部を報道した(ニューヨークタイムズ社;NT社)ことで問題が発生する。NT社は追加の報道をするかどうか悩み、裁判所の判断をもって継続報道をやめるが、同様に情報を入手したライバル社(ワシントンポスト社;WP社)は悩みに悩んだ末、女社長の決断(英断)で公表・報道を決める。当時のニクソン大統領、マクナマラ国務長官の政府を相手に、国家機密か、報道の自由かで悩む関係者の姿を描いている。この映画は、実話に基づく作品である。

 

 国際情勢が日ごとに変わり、国の針路が1国だけで決められない国際化時代の今、関係国との外交の重要性、それに伴う情報収集、情報機密と決断の重要性、公表の在り方と対応など難しさが浮き彫りになって来ている。国際的関係(外向けの対応)と国内的情報公開(内向きの対応)の狭間で、どう展開するか、していくのか現実的には難しい問題である。

 時が変わって内容に違いがあるが、現在の米大統領がマスコミの追及に嫌気を差して締め出したり、身勝手な情報流布で操ってみたり、その動き、反応を見て方針を考えたりしている様を見ていると、より一層、堅実で洞察力の豊かな不断の国際的外交努力が必要であると同時に、「報道の自由は報道によって守られる」、「新聞は権力者の為にあるのではなく、国民の為にある」の姿勢は極めて重要である。

 

 スチィーブン・スピルバーグ監督は、この映画を作るために全く異なった内容の作品(レディープレイヤー1=2018・4・20公開)を後回しにしてまでも作品化したかった、とのことである。首肯同感である。