水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

映画雑感

 今年も、後残すところ10日余りと押し詰まりました。悲喜交々いろいろあった戌年、ブログの作成も今年の後半は、いろいろ大変でなかなか書けない日が続きました。

 もう2か月前の話になってしまいます。定年退職後、自由な時間に近くのシアターでロードショウ劇場では公開されない映画を見ています。普段なら単館映画館で短い期間だけ公開される名画を選んで上映しています。ここで10月25日、「英国総督 最後の家」判決、ふたつの希望」を見ました。前者はインド独立に際しての最後のイギリス総督の物語、後者は、現在紛争の激しい中東レバノン、パレスチナを舞台とした宗教と移民の問題が関係する物語でした。

 インドの最後の英国総督はマウントバッテン卿。近代世界史をもう一度勉強しなおしました。マハトマ・ガンジーやネール首相の名前は昔から聞いて知っていましたが、インド独立に関連しての世界情勢や独立への歩み・経緯の中で考えたことはありませんでした。

 映画のストーリをチラシから抜粋します。

 第二次世界大戦で国力が疲弊したイギリスは、植民地インドを去ると決定。主権移譲の為、任命された新総督のマウントバッテン卿、その妻と娘は、首都デリーの壮麗なる総督官邸にやって来る。大広間と迎賓室がそれぞれ34室、食堂は10部屋で、映写室も備えた大邸宅に500人もの使用人が使える。そこでは独立後に統一インドを望む国民会議派と、分離してパキスタンを建国したいムスリム連盟によって、連日連夜論議が闘わされた。 独立前夜、混迷を深める激動のインドで、歴史に翻弄された人々を鮮やかに描いた感動の人間ドラマ。 

 

 現在も中印国境は国の対立の火種、パキスタンは東西に分かれ東はバングラデシュ、西は今も中国、ロシアの動きが見られ、内政的にも過激派集団の動向が広がるパキスタン、火種が付きません。

もともとヒンデュー教とイスラム教徒の宗教に関連して統一インドの独立が成らず、宗教を基本として分離独立する背景が、この映画では浮き彫りにされ、その中で最後の植民地を手放すイギリス、一つの国として纏めようとするイギリスの苦悩が、総督の使用人も巻き込んで描き出されていました。国境設定に伴う宗教と関連した人々の移動(今のミャンマーとバングラディシュ間の難民にも関連)、難民・移民の悲劇も盛り込んだ英国領インド最後の6か月を浮き彫りにする真実の物語です。70年以上経過した今日でも、依然として国同士の対立、火種が燻る問題です。

 英国王室チャールズ皇太子は、マウントバッテン卿の甥の息子でこの映画の制作に関わっています。「事実は小説より奇なり」、「縁は異なもの味なもの」を地でいく作品でした。

 

 同じ日に、もう1本「判決、二つの希望」も見ました。この映画も難民、移住民、宗教の違いを背景とした作品でした。2人の男(1人はレバノンに来たイスラム教徒のパレスティナ難民の配管工、もう1人はレバノンに住むキリスト教徒の自動車整備工)が自分の家の周りの工事に関係して口論となり、次第に問題が複雑化し社会問題となり国・民族問題を含めた裁判沙汰に発展してしまう物語でした。

 ここでも日常のコミュニティーの姿が些細な一言から崩れ、対立し苦悩する様子が浮き彫りにされています。人種、宗教、国、仲間、日常生活など色々な視点から考えさせられる問題です。決して他山の石、他国の話ではないと思います。

 先日、労働力不足を補う外国人労働者の就労に関する法律を決めた日本。これまでの技術研修生制度の中で外国人労働者を迎え入れて来た、いろいろな業界、団体、会社内における日本人と外国人労働者との間で、この映画と似た問題は少なからずあったのではないか、 国や宗教の違いによる区別(差別)、習慣の違い、考え方の違い、個人と集団の違い、人間の本質は何?

 このような状況を考えると決してこの映画は見逃せないテーマだと感じました。

 あなたならどうする? 大変深い問題を含む考えさせられる映画でした。

 

この映画を見た10日後に、それ以上の悲惨で惨めで悲しく切なく辛い現実が待っていようとは。

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