水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

盛土・切土と土地造成

 何たる大惨事でしょうか。まさかがまさかでない現代。いつでもどこでも起こりうる事なのでしょうか。熱海市伊豆山の土砂崩れ、土石流。

 

 大都市近郊の丘陵地における宅地造成を長く見てきた者の一人として、また研究の一端で高速道路の景観を調べ、見てきた者として「切土」「盛土」の用語はかなり以前から、あまり抵抗なく見聞きし対応してきたように思います。本来の(既存の)地形を変えて土木工事をするうえで、人工斜面(法面)が生ずることは必然のこととして捉え、その人工斜面を如何に緑で覆うか、草地から樹木の生育する樹林へと早期に遷移・復元させ元の緑の空間に変えていくかを調査・研究してきました。早期の緑復元から永続的な自然の緑への転換を計画的に行う技術的手法を探ってきました。

 

 山間傾斜地の土砂崩れや斜面崩壊は、長く(今も)森林砂防工学、土質工学の分野で調査研究が進められてきました。森林経営や林木生産、施業林維持管理と相まって現在もなお重要な課題として捉えられています。土地(森林)と生業の関係が常に熟慮され適切に管理されているなら、基本的に斜面崩壊等は起こらないでしょう。

 熱海の惨事では、この関係が全くなく、それぞれの行為が地区の中でそれぞれがバラバラに行われ進行し日常的、地区的に(または小流域毎に)考えられなかったことにより起こったことではないでしょうか。

 造園・緑地に関係する人なら自然条件や社会条件から地域や地区を十分に分析・診断・考察・考慮し、地域の在り方、対応を考えるのが当然の仕事です。造園・緑地保全や計画に関わる人はいなかったのでしょうか。地方行政で末端の市町村に行けば行くほど「造園・緑地」の計画から実施まで専門職で人がいないのが実情でしょう。

 

 標高差300m以上あり尾根から河口まで3km弱の傾斜の急な斜面で自然的樹林に覆われた小河川流域で、そこに住んでいる人達は、開けた海の方角が朝日の昇る方角として意識こそされ、後ろ背にした険しい山、緑濃い樹林地の奥に意識が行かない「ものは当然だと思います。伊豆山港は近くの海底、岩礁が美しくスキューバーダイビング愛好家にとっての絶好の場所としていられています。そこも今回の土石流の土砂により濁り堆積し、かっての美しさがどうなるか心配されます。また、これまでにも度々話題にされ、今では当然のシステムとして知られている「森・里・海」連携の重要性事実が、またもや考慮されていなかったことが明らかになってしまいました。

大型ダンプが頻繁に行きかうまでは。崩れ大被害をもたらした沢筋の盛土斜面(谷)の、尾根を越した両サイドにはソーラーパネル群と民間の住宅が、山間尾根部を開発し存在しているのはどう捉えたらいいのでしょうか。自然エネルギーソーラー施設、眺望良好別荘的住宅の造成(建設残土)と盛土造成、はてはこの土石流惨事は関係無しでしょうか。