水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

大英博物館・北斎展

   令和4年5月16日(月)、東京ミッドタウン内、サントリー美術館における大英博物館北斎展を見に行きました。地下鉄千代田線・乃木坂駅は前にも日本近代美術館での色々な展覧会で訪れたことがありますが、ほぼ反対側方向にある東京ミッドタウン内のサントリー美術館は初めて訪れました。

 大英博物館葛飾北斎の関係には、日本の文化、中でも特に浮世絵、版画に興味と造詣をもった6人のイギリス人がいたことは全く知らないことでした。19世紀から積極的に日本の浮世絵・版画に強い興味を持った人たちが積極的にその作品を求め、日本の芸術文化について展示・紹介をしてきました。今回の北斎展の内容の豊かさは、彼らの積極的な活動と作品の蒐集には目を見張るものがあります。国内でも人気の作者(北斎)でしたから版画は多く刷られ発行されてきましたが、「紙」作品であるため、多くの火災や災害でその殆どが消失したとされています。それだけに諸外国の人の手に渡り、博物館、美術館で蒐集・保存されてきたことは素晴らしいことと思います。

 今回の展覧会に出品された作品の殆どを大英博物館が所蔵していたことは驚きであると同時に、その経緯を知って博物館の考え方、東洋美術(美術だけでなく)に対する強い興味と深い造詣に感服せざるを得ません。そこには、6名の北斎作品の蒐集家および博物館員がいたとされています。

 6人とは、ウイリアム・アンダーソン(1842-1900)、オーガスタス・W・フランクス(1826-1897)、アーサー・モリソン(1863-1945)、チャールズ・H・シャノン(1863-1937)、ローレンス・ビニョン(1869-1943)、それとジャック・ヒリヤー(1912-1995)。 ヒリアーを除き、5人はいずれも19世紀中ごろに生を受け20世紀初頭に北斎に遭遇しています。奇しくも北斎の晩年(1800ー1860)の頃に符合します。

 今回の展覧会の趣旨は「晩年の北斎=50歳以後:1800~1860北斎の作品と生き方」に注目した版画と肉筆画を中心とした展覧会になっています。

 

 版画作品を作り上げる上では、一般に図版(下絵)制作者、彫師、摺師、それに版元による共同制作が一般的です。北斎も例外ではありません。北斎が描いた絵を版木に載せ彫師が忠実に下絵を板上に浮かび上がらせ、その彫り上げた作品を摺師が作者の意図に沿って色を載せ摺り上げ作品化します。作品に対し作者が納得の上、版元と相談し刷り上げ枚数を決め公表となります。北斎の人気の出た版画で多いものでは 5000~8000 枚摺られたとも言われています。北斎の版画では「藍色」が注目されますし、欧州や中国を通して色の神秘さ、構図の大胆さを探求し用いてきています。版画の「摺り」で当初の線や色が、摺りを繰り返すたびに鈍く変化し「シャープさ」が欠けてきます。大英博物館北斎所蔵品は初期の摺りが多いのでしょうか。

 

 北斎の版画で世界的にも有名な「神奈川沖波裏」と「凱風快晴」の作品は個別にケースに入れられ展示され、この2枚だけは撮影が許可されていました。

両絵とも、25cm×38cmほどの大きさの刷り物。その細部は、余ほど近くで目を皿のようにして見なくては分からないでしょうし、そうすれば絵全体からの雰囲気は味わえないでしょう。作者北斎は、どんな人が見るのか、どのような見方をするか、など考えることなく自らの感覚、思い、情感で絵筆を運んだのでしょう。感覚の同時性、絵画の良さや面白さはそこにあるのでしょう。人の感情・思いは200年近く経っても変わらず伝わるものだ、と感じました。会場で北斎作品の葉書を買い求め、この気持ちの高まりを伝えました。

 

 珍しく今回は展覧会のカタログを買い求めました(大英博物館北斎 ー国内の肉筆画の名品と共にー;Hokusai from the British Museue サントリー美術館・朝日新聞、2022).。

このカタログを通して、知らなかったこと、分からなかったことを知る事が出来ました。北斎にあやかりたい!

また、次、どこかで北斎に会ったら別の見方で鑑賞できるでしょうか。