水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

北斎 余話 その3

 浮世絵版画の美術館として都内原宿にある太田記念美術館は良く知られています。浮世絵版画はじめ浮世絵肉筆画などの蒐集で有名で、建物の規模は大きくないですが良く知られた美術館です。ここで令和4年の春から北斎とライバルたち」の展覧会をしています(4.22~6.26)。その展覧会に行ってきました。1階と2階にそれぞれ若い時代からの作品とその同時代に活躍した浮世絵師達の作品が整然と並んでいました。

 

 展覧会の表題に従えば、「北斎のライバルたち」とは、勝川春好、歌川広重、二代歌川豊国、東洲斎写楽山東京伝等が出ていました。彼らの作品が時代ごと、作品ごとに北斎のそれと対比しながら、門人(昇亭北景や勝川春英ら)をはじめ、その時代の浮世絵界を代表する作者の作品を見る事が出来ます。

同じ江の島の絵で、北斎はブルーを基調とし近景と中景に砂浜と松林、遠景に不二を配していますが、門人の昇亭北景は「江の島七里ガ浜」で江の島と島渡の砂洲の奥に不二を、広重は「相模七里ガ浜」「相模七里ガ浜風波」で大きな波間にゆったりした不二の姿を背景に入れ描いています。また、「信州諏訪湖」畔の高島城の絵で、北斎はデフォルメした松の大木が画面を2分し湖畔の高島城を水辺に描き、その奥、小さく不二を湖水と空のブルーの中に描いていますが、広重は富士36景の「諏訪湖」で内陸に高島城を小さく入れ、遠景の富士と近景のリアリティーある松で静かな湖畔の景を具象的に表しています。

 

 いろいろライバルと目された人の作品を見比べても、北斎の作品は違います。他の人の作品とは比較できませんし、ライバルにはならないでしょう。「絵」が全く違います。北斎作品には画面構成や捉える瞬間のダイナミックさ、生き生きした動きが随所に見られますが、他の人にはありません。それに北斎には茶目っ気があります。「甲州三坂水面」では遠景の富士は夏の富士、水面に映る富士はやや大きくしかも冬の富士を描いています。登場する人物の表情やら荷物に版元の家紋を入れたりしています。版画を基に人々が絵を囲んで会話を楽しむことを想定しているかのように。

 

それが北斎50歳を過ぎてから到達し得たものだとは驚かされます。

大英博物館北斎展と時を同じくして北斎の作品が他の浮世絵版画師達の作品と合わせ特別展が開かれるのは、多くの人がいろいろなジャンルの北斎の浮世絵版画作品に惹かれるからでしょうか。(すみだ北斎美術館北斎 百鬼見参)、MOA美術館(北斎と広重)、Digital×北斎vs広重  大鳳凰図転生物語(東京オペラシティタワー)など春から夏にかけて繰り広げられます。