時間は確実に流れていますね。7月に入り梅雨が間もなく空けそうですが、ドイツの定期専門雑誌「Natur in NRW」の2号(2023)が6月末に、手元にやってきました。
1号の翻訳が済んでから2か月です(私の生活を追いかけるように)。毎号恒例の内容と同様に、20-1ではその概要(表題・副題、著者と連絡先)を明らかにしておきたいと思います。詳しくは20-2に示します。地球誕生から大変長い時間が過ぎ、生物の発生・消失・消滅、発展、種の発展から人間の出現、そして現在、病んだ地球の時代ともいえます。生物多様性の重要性が一層高まる中、各国、および共同体の進むべき方向はいかにあるべきか、熟慮する必要があります。今回のテーマは土壌(全ての有機物の基本ともいえる)、EUの一貫した環境に対応するテーマに基づいたプログラムの状況を明らかにしています。その方向性と着実な成果の積み上げには見習うべきものがあると思います。
1.Bodenschutz bei Naturschutzmassnahmen
(自然保護指針・施策における土壌保護)
Bericht von der Fachtagung mit Workshop zur Entnahme und Verwertung von Bodenmaterial bei Naturschutzmassnahmen (ワークショップ形式による専門家会議の報告;
(自然保護指針・施策における土壌等の除去と再利用)
著者;Dr. Martina Raffel 他3名
連絡先;martina.raffel@brms.nrw.de
◆NRW州自然・環境保護アカデミーと共同で進められている統合LIFEプロジェクト(大西洋砂地景観について)が既に3回行われており、 この報告は、2023年2月9日、「自然保護指針・施策における土壌保全・保護」に関するテーマで行われ、既に適正な先進事例である自然保護の視点に立った生物生息空間改善、種保護から見た水資源施設、再自然化事業について述べています。
2.Naturschutzfachliche Bodeneingriffe aus Sicht des Bodenschutzes
(土壌保護の観点にたった自然保護のための土壌介入)
Bodeh als belebtes Naturgut und schaedliche Bodenveraenderungen im Rahmen von naturschutzfaechlichen Lebensraumoptimierungen (生きた自然素材としての土壌及び被害を及ぼす土壌改変;自然保護の視点に立った生物生息域空間の改善・最適化)
著者;Dr. Norbert Feldwisch 他1名
連絡先;n.feldwisch@ingenieurbuero-feldwisch.de
3.Die Renaturierung der Lippe in Paderborn-Sande
(パーデルボーン・ザンデ間におけるリッペ川の再自然化事業)
Massnahmenumsetzung und erste Entwicklungen (指針・施策の変更と再生事業)
著者;Dr.Guenter Bockwinkel他3名
連絡先;guenter.Bockwinkel@nzo de
◆リッペ湖に隣接した地区(ザンデ市)に新たに河道再生(自然再生と多目的貯水)の再自然化事業について述べたものです。リッペ川旧河道域を蛇行させ、多様な水辺を創出(リッペ湖畔)した事業の報告です。
4.Rueckenwind fuer herausragende Arten der FFH- und Vogelschutzrichtlinie
(FFH地域・鳥類保護指針における特定種にとっての追い風)
Der Life-Projekt "Siegerlaender Kultur-und Naturlandschaften"(文化的景観・自然景 観におけるライフプロジェクト)
著者;Prof. Dr.Jasmin MantillaーContreras 他3名
連絡先;j.mantilla@biostation-siwi.de
◆特長的な文化景観、自然景観を持つ地域における(牧草地景観=自然保護種保護、施業林の昔の景観復元;自然再生地確保と保全・修復の事例についての報告です。
5.Neue Fachinmormationen aus dem Biodiversitaetsmonitoring in NRW
(NRW州における生物多様性モニタリングから見た新たな専門情報)
Monitoring als Wissensbasis fuer den Schutz der biologischen Vielfalt
(生物多様性保護のための新知識・モニタリング)
著者;Juliane Ruehl 他4名
連絡先;juliane.ruehl@lanuv.nrw.de
◆NRW州における2000~2020年の間の生物多様性に関するデータの集積と種の動向、その間に取られた施策との関係についてモニタリング結果に基づいて報告しています。
6.Asiatische Hornisse melden! (アジア系ハチの報告)
Herkunft, Verbreitung, Invasitaet(その由来、生息域拡大、侵入)
著者;Caris Michels
連絡先;carla. michels@lanuv.nrw.de
◆スズメバチ(欧州型;Vespa crabro とアジア型;Vespa veltina nigrithorax)について、その生息域、侵入拡大状況などについての報告です。
今号の特徴は「土壌」、なかでも最も重要な表層土壌(栄養分を含んだ;Mutterboden)です。緯度の高いドイツ、しかも地史的にも古いヨーロッパでは表層土壌は極めて重要です。特に生物多様性のこの時代、表層土壌に含まれる有機物は生物の生息に少なからぬ影響を及ぼしています。緯度が高くなればなるほど(国内で北へ行くほど)有機質を含む表土の持つ意味は大きいものがあります。土地の取り扱いに際して、この表土が持つ意味は土地の生産性、潜在力の点からも大きく、その取り扱いには十分な配慮が必要です。土地の潜在力維持のために表土を確保し、また表土の潜在力を活かして自然の営力を維持するため(例えば自然復元など)どのようにするか、事例を通して検討しています。 各方面・分野で土壌に関連する課題は多く、農業の在り方と土壌(耕地、牧草地、森林)、水収支(水辺再生における土壌、消火湖沼創出)などの関連事業でも表土についていろいろ配慮され、事例を積み重ねています。これはその報告です。
また、州における生物多様性モニタリングに関する各種のデータ集積と分析ならびにドイツNRW州におけるスズメバチ(ヨーロッパ種とアジア種)の最近の動向についての報告もあります。(勝野)