水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

神社の神聖性が?

 今こそ他分野との相互理解や環境を考えた広い視野が求められると思いますが。

 先日の読売新聞朝刊(2022.12.19)に「神社本庁 総長 決まらず」の記事が載りました。その記事を読むと、神社本庁は、今、世間で注目を集める宗教法人と同じ宗教法人組織、1946年設立で全国の78,000神社の総元締めです。つまり、全国各地、各都市に今も位置する、以前の縣社、総社の代表でもあるのでしょう。有名な、名だたる身近な神社の鳥居近くに「神社名」を表す石柱があり、そこに彫られた神社名の頭文字「縣社」「官幣社」などの文字がコンクリートで埋められ建てられています(埋めなければならない事情、作り直すには、そんな石は今は無い、などの課題)。

 全国各地の鎮守の森、神社は集落の人々が氏子となり神社を、これまで長く守って来ています。「八幡様」「地区の守り神」として位置づいてきており、今も各月の伝統的行事が続けられてきています。その神社境内は多かれ少なかれ、地区・地域の緑の拠点として集落、町村地区の大切な緑の核としての役割を担って来ています。

 地区、地域の重要な「緑の核・塊り」であるは、かっての私の研究分野での師でもある宮脇昭先生(横浜国大名誉教授)の言葉を借りるまでもなく、自然や文化の拠り所、伝統と民俗文化の壺であり、先祖やふるさとの緑として大切に保護・保全・復元すべき空間でもあるのです。

 

全国の神社の森(境内や社周りの緑)の保護、保全、育成は言うに及ばず、それを地区の緑の核として地区や集落の緑の充実・拡充、はては村・町全体の緑の充実に発展し、住みよい街造り、緑の都市の再生へ誘導していく事こそ、いま神社本庁の基本的構想・指針として持つべきではないでしょうか。

 全国の神社境内の緑空間の充実・拡大が、人々の住む町、都市の環境整備に少なからず力強いうねりとなることは間違いありません。

 

 そんな大切な緑を守る総本山を統帥する神社の主が、自然の緑や荘厳な佇まいを生み出す場所を考えるべき人が、人の感情や組織の枠や拡大に拘泥し、本来あるべき、人々の祈りの拠り所である厳かな空間を守り、広げるべく努力を蔑ろにすることは悲しむべき状況でしょう。今、現代の社会的状況で、組織の長である人は、未来に向け、それよりもっと他に考えるべき課題があるように思われます。

 本来、神社の格式を越えて各地域の守り神の神聖な場所を緑の網(ネットワーク)充実・拡大の核にすべく努力を関係諸氏と共に務めてこそ、SDGs17項目(内、3,11,13,15)にあるべき姿でしょう。