水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

海外雑誌での研究  16-2

前号(15)と同じように各報告の概要について概説します。

ドイツNRW州の定期的情報紹介をさぼっていましたら、もう4号まで送られてきてしまいました。まだ、2号の全てを紹介しきれていないのに。

 

1.Windenergienutzung und EU-Vogelschutzgebiete in NRW

 風力発電施設の開発・利用とNRW州におけるEU鳥類保護地域

    Windenergieausbau und Artenschutz schliessen sich nicht aus

   「風力発電施設建設と種保護の課題はまだ解決していない」     

    ●著者:Matthias Kaiser  他1名 ●問い合わせ先:matthias. kaiser@lanuv.nrw.de

        (NRW州自然・環境保護、消費者保護庁、第24部;種保護‣鳥類

 

 ロシアのウクライナ侵攻以来、欧州の化石燃料(石油・石炭・ガス)調達は大変な状況になって来ています。それ以前に地球環境保全の立場から、特にドイツでは自然エネルギーへの転換や地球にやさしい環境対策としての再生エネルギー活用に先進国の雄として積極的に動いて来ています。

 風力発電もその一つで、全国各地、自然エネルギーのポテンシャルを調査・検討しながら陸・海からの風を利用し建設整備が進められてきています。今回の報告は、NRW州に設定された欧州鳥類保護地域における風力発電施設についてのものです。■(勝野記)

 

 NRW州風力発電令(2018)では、欧州鳥類保護地域風力発電新設地域から予め除外することにしています。

ここではNRW州における鳥類保護地域での風力発電施設危惧対応種(10種; このなかには鶴=Kranich, タシギ=Kiebitz, タカ類=Baumfalkeなど含む )、他にカモメ類(Moewen ;Herings-,Lach-,Mittelmeer-, Schwarzkopf-, Silber-. Sturmm-.)の他、フクロウ類、トビ、オジロワシ、コウノトリなど25種の想定調査が行われ、対応種の2/3=67%がEUの鳥類保護地域を重要な生息域としており、しかも50%以上の種が営巣、繁殖しています。

 2017年の同州のマニュアルによれば、46種が風力発電施設危惧種、同地域内で繁殖・営巣・休息場として利用し、内29種は欧州鳥類保護指針(EU-Vogelschutzrichtlinie)第一種になっています。28ヵ所に及ぶ欧州鳥類保護地域は、NRW州全土の4.8%であり、種対応では5種のみが該当しているだけです。ここでの風力発電施設建設には、環境アセスメントはじめ色々な予測調査が求められ計画の安全性から莫大な時間とコストが掛かると予測されます。

 これに続き、この報告では代表種である12種の鳥類を挙げ、それぞれの現状、生息域、特徴、風力発電施設整備での留意点などを示しています。 2000年自然地域(Natura-2000-Gebieten)における古い風力発電施設の改善・拡大整備(規模拡大)に対しては、風力発電施設危惧種への細心の配慮と欧州鳥類保護地域のタブーゾーン(設置禁止地区)が求められます。

   

12種とは、Wespenbussard, Rotmilan, Schwarzmilan,  Baumfalke,  Wanderfalke, Grauammer, 

                   Herings- u. Sturmmoebe,  Rohrweihe,  Uhu,  Schwarstroch,  Weissstorch で,

     猛禽類、フクロウ、ツル等が占めています。

★NRW州に限らずドイツは、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー政策でガス他各方面でのエネルギー施策が難しい局面です。しかしながら、これまでの環境政策と相まって自然エネルギー(風力)に対する考え方は特段の変化はありません。それ以上に環境に配慮した計画のあるべき方向性、課題解決のためのポイント探り、調査研究がここに示された通り、進められています(勝野)。

 

2.Feldvogelschutz in der Zuelpicher Boerde

  テュルピッチャーボルデ地区における耕地鳥類保護

    Landwirtschaft und Naturschutz gemeinsam fuer mehr Biodiversitaet

      生物多様性のため農業と自然保護の協調

  ●著者:Alexandera Schieweling 他3名 

  ●問い合わせ先: alexandera. schieweling@biostation-dueren.de

       (デューレン郡生物ステーション

 

 テュルピッチャーボルデ地区は有史以来の昔から畑作農業で知られた地区です。しかし、この地区でも農業の集約化により生物多様性は貧化しています。この状況をストップするために農業団体(Landwirtschaftskammer)と自然保護センターは共同で ”耕作地の鳥類種育成・援助プロジェクト” を立ち上げました。ここでは、野鳥と無脊椎動物モニタリングの調査を無作為に抽出した農地で行い、初めての結果を示しています。

 このプロジェクトの意味は単に生物多様性保全のみにあるのではなく、実際の営農空間での棲息場の質的低下阻止にあります。つまり、テュルピッチャーボルデ地区のような自然保護をも対象とした収穫量拡大地域にける指針を位置づけることです。この指針を受け入れ、生物多様性の効果を上げるため、連邦環境保護連盟(Deutsche BundesstiftungUmwelt)は、この地域の農業従事者に指針(当地域の貴重な生物稀少種の保全・育成プロジェクト)を提示しています。

 テュルピッチャーボルデ地区での対象となる動物種(鳥類等)は11種(Feldlerche, Grauammer, Kiebitz,Rebhuhn,Schwarzkehlchen, Wachtel, Wiesenpieper, Rohr- und Wiesenweihe, Feldhamster, Knoblauchkroete ; タヒバリ、カササギ、ヨーロッパウズラ、ウズラ、チュウヒ類、野ハムスター、ヒキガエル類など) です。

この地域での農地における文化的景観施策(kulturlandwirtschaftsprogramm)は当該地区(デューレン、アーヘン、オイスキルヒェン)の農業団体(landwirtschaftskammer)と協議し進められ、4年間のプロジェクト(01.08.2016--31.07.2020)で農地の取り扱い92地区(165地区の内)、2017~2020年の間に145haとなりました。この間、3つの生物ステーションン共同で142のプロジェクト(例えば穀物未収穫地区、播種放棄地区)が進められました。全部で693haに及ぶ農地が対象地(播種しない=459ha 、穀物収穫しない=152ha、自然任せ草地=40ha、他=42ha)です。

 2018年には、ライン・エルフト郡とデューレン郡、オイスキルヒェン郡の3郡で37.000haの地域に、100haの調査試験区10ヵ所(各区10ha)が設定され鳥類繁殖調査が行われました。地域は典型的な農業地域に設定され、取り扱い指針は10ヵ所にそれぞれの方法で示されました(播種しないが最も多い)。

 対象種は4~6月、早朝1回調査され、その結果はArc-GISに取り込まれ纏められます。100ha設定地区10カ所での 棲息モニタリング調査はシュテュックマン財団(Stuekmann-Stiftung)の支援で2020ー2021年も引き続き行われました。

 調査の結果、対象地域での各種鳥類の生息密度は高く、しかも地区内での繁殖の傾向が高くなっています。タヒバリでは2017年から次第に試験区での繁殖が増加し2021年には2017年の2倍になっています。その生息域では耕作地環境の調査も行われ、農道に沿った低木ブッシュ、叢林、境界柵、樹木等々(小生態系=昔からの農地の小構造)が囀り場(Singwarte=縄張り誇示)を持っており、他の稀少種にとってもその縁辺部構造(Randstrukturen)は重要です。農業地区におけるこれらの消失は、他の生き物(無脊椎動物)の種数、生息数の減少とも関連しています。ここでは、他の手法のモニタリングで、D-Vac-SamplersとMalaisefallenが用いられ(シュトックハム財団による支援;2010-2021)ています。

 

 この事例調査研究は2019年国連の生物多様性プロジェクト10として表彰され、その内容はユーチューブ(https://youtu.be/Cqd7G7DQA7s.)で見られます。

 ■ テュルピッチャーボルデ地区は、NRW州の最西部に位置し、ドイツ・ベルギーと接する地域で      アーヘン市近郊の地域です。

 

★NRW州や郡の行政組織、自然保護センターが地域の農業団体(協会や組合)と共に農業と生物多様性、農村の自然保護に力を注いでいることは傾注に値します。の事例報告と同様、ドイツ・NRW州では、如何に農業従事者や地域住民を取り込み、各レベル(EUから州、郡、市町村),各部署協働(協力、理解)で計画的に調査、計画・実践を進めているか、よく分かりますし、その動き(現場での事例調査、モニタリング、情報公開)には感服します。21世紀の地球環境配慮にたいする施策の遂行は「かくあるべし」と思ってやみません。我が国でも国、地方、各県や市町村では関連諸団体、組織と共に問題を共有し、推し進めていくべきだと思います(勝野記)。

 

3.Massnahmenkonzepte fuer FFH-Gebiete

  NRW州におけるFFH地域(動植物種・ハビタット保護区)保護指針コンセプト

    ※Ziele und Inhalte des zentralen Steuerungsinstrumentes zum Erhalt und zur   Wiederherstellung des europaeischen Naturerbes in NRW

 ※NRW州における欧州自然遺産(Naturerbe)保全・復元再生のため中心となる

  取り決め私案の内容と目標

  ●著者:Ingo Hetzel 他3名  問い合わせ先:●ingo.hetzel@lanuv.nrw.de 

       (NRW州自然・環境保護、消費者保護庁、第23部;ビオトープ保護

 NRW州には517ヵ所に及ぶFFH地域(動植物圏保護地)があります。それはヨーロッパレベルでの生物多様性(biologische Vielfalt)を保護するため、とりわけ貴重で価値の高い動植物種、同生息域保護のためのものです。この地域の自然遺産保全と復元再生のためにはFFH取り扱いの基本的指針(Massnahmenkonzepte)が重要です。

 EU内では国境を越え保護すべき地区のシステム(自然=2000;Natura 2000)が設けられています。NRW州には184.740ha;517ヵ所におよぶ保護地があり、州面積の5,4%を占めています。

 当州FFH地域の中心目標は、EUで規定されたⅠ、Ⅱ(選ばれた動植物生息及び地域保全)のカテゴリに入る地区の保護です。NRW州の自然地域区分(大西洋性=主として河川流域、大陸性=主として山間地)で2分されます。

 EUでの新しい生物多様性戦略2030(Biodiversitaetstrategie 2030)が2020年に公表され、より着実に進めることにより、特に全体の30%の生息域が理想的な環境にあることを目指しています。FFH指針2,6項に基づき地域管理(Gebietmanagement)で保全指針(Erharltungsmassnahmen)を決めます。

NRW州では、FFH地域の縮小化、質の低下に対しMAKO(Massnahmenkonzepte)により対応しています。保全度は内容で「C」から「B」への保全対策を進めます。

 FFH地域については次の5項目の要求達成が求められています。

①FFH地域と種、その生息域タイプ全てを明らかにする。(保全目標)

②全ての生息地、種について 保全・復元再生のための措置を明確にしめす。 

③全ての生息域、種についての保全度の報告。復元・再生の指針作成に必要。

④達成目標への明確な目標を示す

⑤目標の法的、行政的、取り扱い(期間と時間)に必要な指針の設定

NRW州は、以下の4項目を州独自の要求として掲げています。

①それぞれの地区における正確な地域区分、対応措置、

②対象地域の立地、進展目標と措置、図評価による措置の見える化

③関連資料のデータ化(場所、目標、自然保護データバンク(NRW;@LINFOS)

④州独自に自然保護の目指す目標への配慮(特にFFH指針のⅣに示された種、レッドリスト種、連邦自然保護法30条に該当する種・ビオトープ、30条以外の保護すべき生息域

 

MAKOは誰が担当するか。基本的には州の自然保護局で、その下にある53の郡・特別市の自然保護部署、さらにドイツ全土にネットをもつ40の自然保護センターが支援します。森林帯と軍用地には別の取り決めがあります。 (MAKOの流れは省略)

MAKOは①地形図、②、③それと対応した目標・指針(図と表)、④解説説明文(写真付き)で構成され、これについてNRW州ではデータが2018年からオンラインで表示されFISで見る事が出来、(FIS;Fachinformationssystemen) ハンドブックにもなっています。州内の517ヵ所のFFH自然保護地域は全てMAKOにデータ記録されています。MAKOの仕組みで計画、指針作成には今後10-12年かけて進められる予定です。

 

注)FFH(動植物種・ハビタット保護区)については、最新のランドスケープ研究(日本造園学会学会誌)86(04)の連載記事;生き物技術ノートNo.116:EU Life programm にみる特に哺乳類を対象とした生物多様性保全活動の特徴 (園田)で紹介されており、EUの中でのプログラムの一端が理解できる。

 

★国の自然保護に対する動きは、EUのそれと連動し、各州にFFK自然保護地域を指定、EU・連邦・州さらには各市町村まで統一的かつ、一体的に捉え計画・維持管理する状況にあります。電子情報を駆使し細かく進めていることが分かります。

 

4.Na-Tuer-lich Dorf-- Naturschutz vor der Haustuer

  自然豊かな村ーーー庭先から自然保護 

 ※Dorfbewohnerinnen und Dorfbewohner in Eifel und Zuelpicher Boerde helfen, die   Artenvielfall zu retten

 ※アイフェル、テュルピッチャーボルデ地区住民達が種多様性を助ける動き

   ●著者:Astrid Mittelstaedt 他3名 

   ●問い合わせ先: a.mittelstaedt@biostation-bonn-rheinerft.de

        (ボン、ラインエフェルト生物ステーション;

  テュルピッチャーボルデ地区 、アイフェル地区の住民達は種の多様性の保全に貢献しています。NRW州の南部の4つの生物センターが”Na-Tuer-lich-Dorf" =屋敷周りの自然保護(Naturschutz vor der Haustuer)の LEADERプロジェクトの下で集落内の典型的な動植物種保護、復元再生をするために協力しています。

 このプログラムは2017年にスタート。NRW州西部のアーヘン、デューレン、エルシュタット、オイスキルヒェン、アイフェル地域、ボルデ地域の農村集落をLEADERプロジェクト地域として指定し始まりました。市町の関係部局、関連協会団体などが参加し集落・屋敷周りの特徴ある動植物種の保護、保全、復元に取り組んできています。国連の10プロジェクト「集落ビオトープ;DorfBioTop」は2020年、第二のドイツ景観保全賞となり、同時に国連の生物多様性10プロジェクト;Na-Tuer-lich Dorf になりました。このプロジェクトはまた、戸口からの自然保護;Naturschutz vor der Haustuer;"Na-Tuer-lich-Dorf”の名で2020~2023で進められています。

このプロジェクトは自然保護、農村地域の集落内の資源保護にまでも関連し、コロナ禍の中で進められて来ています。

 農家の玄関先露店の進展、教会や公共用地の緑化(自然再生・郷土種利用・野生草など)、小学校などにおけるミツバチの家づくり、ツバメの軒先営巣・繁殖支援・巣箱の設置、生態系緑化を学ぶ散歩会などを通してこの事業が進められてきています。

 コロナ禍の折、各種集会や勉強会を開く事が出来なくなり、オンラインによる会議、集会、勉強会が余儀なくされ進められていますが、別の意味で住民参加、事業・プログラムの理解を住民ともども進めることができる状況にもあります。

 

環境政策、施策の具体的展開を考えるとき、行政側の幅広い事業の開発、展開、実施が機関上下と横の広がりがもとめられます。先進国では、それ程大きな違いはないものの、実際に継続的に連携を保って事業を進めることには違いがあるようです。やはり環境先進国の事例を冷静に捉え、習うべきところは習うべきでしょう。

 

5.Entwicklung der Wasserinsekten in der Lippe

  リッペ川に生息する水生昆虫(Wasserinsekten)の動向

 Langzeitdaten aus 50 Jahren zeigen Erfolge de Gewaesserschutzes

  水辺環境保護の超長期(50年)調査結果の報告

  ●著者:Mario Sommerhaeuser 他4名 

  ●問い合わせ先:sommerhaeuser.mario@eglv.de      (リッペ川協会)

 ドイツにおける河川整備の歴史と同様、NRW州でも20世紀後半までは多くの河川で水質が悪化していました。流れの緩やかなリッペ川も同様で、種の多様性貧化が起こっていました。河川の水質改善と共に自然性復元の指針に基づき大きく変化し、それは長期間にわたる調査の結果、150種に及ぶ生物種が確認され、150年前の11倍になっています。

2000年には「欧州水資源指針;Europaeischen Wasserrahmenrichtlinie(WRRL) 」が制定され欧州では水資源保護行政が進められています。その中心は水環境の保護(水質保全から水辺の再自然化まで)にあります。1970年以降積極的に浄水施設が整備され水環境の水質保全が進みました。NRW州、ラインラント・プファルツ州、ヘッセン州ではそれぞれ独自に2005年までに1.400の施策(再緑化、再自然化など)が実施され改善されてきています。

基本的に水環境の改善には自然に近い形の堰、護岸、堤外湿地の整備があり、それにより水生昆虫はじめ生物の復元再生が進めらてきました。

  Lippe(リッペ)川はNRWで最も長い河川で220kmに及び、石灰岩地帯(カルスト)に発し河川の大半は砂・粘土(Sand- Lehm)質土壌の地域を流れています。その地域は150年来の工業地域と近年60年来の集約農業地帯が広がってきています。

  鉱山ー冷水利用等で20世紀初めに水質の状況・塩分濃度は3500mg/lであり、第二次世界大戦後の1960年代、河川水面の「泡の山」は珍しくなく、リィッペ川の生き物は、ハム市下流で皆無、魚は生息無しでした。1980年代のリッペ川流域での浄化施設整備に伴い、水質は改善され、53ヵ所の生物浄化施設(初めて導入)によりアルミニュウーム、窒素、リンの除去も進みました。

 リッペ川水質生物生態改善を目指したプログラム(Lippeaueprogramm)が1990年代半ばよりスタートしました。リッペ川河川協会(Lippeverband)は2017年から「生きているリッペ川プログラム」によりリッペ川上流部組合、アンスブルグ地区庁(Bezirksregierung Amsberg)と協働で20-25年後を目指し水環境整備を進めています。

 今日までリッペ川の生き物調査はリッペ川河川協会により1930年代からリッペボルクから147kmにわたり水質調査が進められ、その中で水生生物(マクロ生物動態;Makrzoobenthos; 1mm以上)の定着が見られ、この際の手法が通常の調査法として進められてきています。

 その結果、1970~1974年で48種中13種、2019年までには13種から150種に増大しています。種の変化では、1970年以来2020年までに48種から1057種、22科に及んでいます。それら生き物の棲息部と餌についても分析しており、水底の環境では1970年代では泥・ヘドロが60%以上でしたが1990年代には植物が半分を占め、2000年代になると多様な状況になってきています。1970年当初、棲息部は「泡」の中が中心、1980年以降次第に砂利や石での植物体での生息が多くなり餌も葉や木片が増大、近年では分類不可の物も増えています。希少種も出現するようになってきており、トンボ類やカゲロウの仲間類の棲息も確認されるようになって来ています。レッドリストに載るものとして4種あげられており、いずれも危惧種(段階3=gefaehrdet)となっています。

河川の再自然化事業(Renaturierugsmassnahmen)や浄化施設改善などにより水質改善が進み当初10年の11科から22科へ増大しプログラムの意義、効果が表れてきています。

 

 

★水資源、水利、河川の在り方など社会情勢と並行して20世紀初めから大きく変化を共にしてきたリッペ川。その50年(1970-2020)の間の水生昆虫(Wasserinnsekten)の動向を調査して来ていること自体が驚嘆に値します。 

 連邦政府の環境に対する方向付け(1975年以後)同様、州の体系的な法的、行政施策的対応の素晴らしさと、それに連動した着実な継続調査の進展が実を結んできています。

この報告の背景には社会の動向と合わせ河川に対する考え方の変化を(環境系として)多部局が共にしながら着実に資源の本質を捉えようとする行動が見て取れます。