水と緑と自然、それは「にわ」

都市や農村における緑地の在り方、自然環境の資源とその保全、「にわ」の設計と維持・管理

川沿いの桜並木 あれこれ

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私の家の近くに麻生川があります。昭和30年ころまでは里山が広がり、田畑が川沿いに多く見られた地区を流れています。近くで流域面積が大きい鶴見川に合流し横浜市から東京湾に注いでいます。以前には谷戸水田も幾らか潤していたのでしょうが昭和40年代以降、現在まで続く都市化、宅地化が進行し今では雨水排水河川になっています。区画整理河川整備(洪水対策)を合わせ、ほぼ直線の1.1kmの桜並木が整備され現在に至っています。近年、川沿いに宅地化が進み,それまで自由に枝を広げ伸ばしていた桜も、住生活に邪魔とかで枝が切られ、根元も草や笹が邪魔だと言ってコンクリートで固められるヶ所が続出、味気なくなっています。花が咲く10日間程だけ人々が愛でて散策、それ以外では全く見捨てられた並木道です。

 一方、お隣の川崎市多摩区には二ヵ領用水(全長32kmうち、宿河原用水)という名の、歴史的にも由緒ある用水路と桜並木宿河原桜並木は1958年地元有志により400本植えられた)があります。多摩川から取水(上河原堰、宿河原堰)して下流の水田地帯や農業地域(さらに工業用水にも)に長く水を供給してきた全長32kmの用水です。関ヶ原の戦いの3年前に測量され14年の歳月をかけて作られたと言われています。この用水路は直線部分は殆ど無く、流路は緩やかに蛇行し、灌漑用水として取水口で水量が調整され流れるため、地形や立地、土地利用(田畑、果樹園)を勘案し時間をかけて作られたことから、周囲の景観や人のスケールにマッチした規模と形が残っています。しかし、近代化、都市化の影響で蓋掛けにより川が見えなくなったり、直線化されたり時代の移り変わりによって激しく変化し今日まで来ているように思います。堰の建設により水路の水位が安定し、利水の時期(灌漑期)以外は水辺の維持用水だけが流れています。そのため、川の中、河床近くの水辺を歩道や休息、自然探勝のために利用することが出来ます。桜の枝は水路に覆いかぶさるほど伸び、開花時期は見事な桜トンネルになって花見ができます。つまり、人間の手によって時間をかけて作り上げ、管理され育てられてきた用水路と桜並木は、それだけ直接、間接に桜並木と関わる人々の日常生活に溶け込み、守られ育てられ維持されて来たと言えます(写真参照)。 同じ河川沿いの桜並木の名所でも麻生川とは大きな違いです。

 草花を植えて街を美しくしたり、身近な生き物の住処を守るために緑を多様で豊かにすることは今日、大変重要ですが簡単ではありません。基本的な方針を決めて、あるべき姿を理解し、時間を掛けて造り、維持する人々の力が大切です。

 愛護の心と地道で小さな継続する力が求められるのだと思います。